PISA2025の科学で、習熟度レベル5以上の高得点層の割合は、日本では男子が女子を4.9ポイント上回った。OECD平均の差は1.6ポイントで、日本の方が男女差が大きい。9月8日に公表されたPISA2025から、この男女差、日本の読解力低下と低得点層の増加、そして英イングランドとオーストラリアの結果を、国内と海外に分けて整理する。
国内の教育ニュース
PISA2025、科学の高得点層で日本は男女差がOECD平均より大きく…科学学習の楽しさ・興味も女子が低い
PISA2025の中心分野だった科学コンピテンシーで、習熟度レベル5以上の高得点層の割合は、日本では男子が女子を4.9ポイント上回った。OECD平均でも男子が上回るものの差は1.6ポイントにとどまり、日本の方が男女差が大きい。日本の女子の高得点層の割合そのものはOECD平均の男子・女子をいずれも上回っており、国際的にみれば高い水準にある。
一方、科学の学習の楽しさや科学への興味を尋ねた設問では、女子の肯定的な回答はどの項目でも男子より低く、OECD平均の女子と比べても有意に低かった。学力だけでなく関心や学習意欲の面でも男女差が確認された形である。なお日本の平均得点は前回2022年調査より3分野すべてで下がったが、いずれもOECD平均は上回っている。
出典:ReseEd「【PISA2025】科学学習の楽しさ・興味、日本の女子はいずれもOECD平均下回る」(2026年9月9日)
筆者コメント
科学の高得点層や科学への興味に男女差が出るという現象は、後述するようにイギリスでも同じように現れており、興味深い記事である。問われるべきは、そもそも男女で科学への適性に違いがあるのか、それともライフキャリアに関する思想や言説が生徒の関心や自己認識に反映されているのか、という点だ。前者であれば教育の側でできることは限られるが、後者であれば、学校や家庭が発する言葉や進路指導のあり方そのものが介入の対象になる。昨今、この種の問いに切り込むことはますます難しくなっている。しかし、難しいからこそ、感覚論で済ませるのではなく、仮説を立てて検証していくことが望まれる。
PISA2025、日本は読解力を中心に学力格差が拡大か…SNSや生成AIの不適切使用が背景と分析
OECDが9月8日に公表したPISA2025について、NHKは、日本が科学と読解力で前回より順位を落としながらも3分野とも5位以内を維持した一方、読解力の平均得点が大きく下がり、学力格差が広がっている可能性があると報じた。日本の平均得点は科学538点、数学525点、読解力503点で、基礎的な習熟度に達しない「レベル1以下」の割合は読解力18.6%(前回比4.8ポイント増)、数学16.1%、科学11.3%と3分野すべてで増加し、高得点層には有意な変化がなかった。
読解力低下の背景として、NHKはSNSや生成AIの不適切な使用が指摘されていると伝えている。一方で生徒質問調査では、授業で生成AIを「毎日またはほぼ毎日」使う日本の生徒は7.0%(OECD平均19.1%)にとどまり、加盟国中で最も低かった。文部科学省は低得点層の増加と短文読解力の低下を課題として受け止め、生成AIを安全かつ主体的に活用できる環境整備を進めるとしている。
出典:NHKニュース「国際学力調査 読解力中心に格差拡大か SNS 生成AI不適切使用で」(2026年9月9日)
筆者コメント
SNSや生成AIの不適切な使用が読解力低下の原因だと、一律に言い切ることはできない。PISAは相関を示すにとどまり、授業で生成AIを使う頻度が加盟国中最も低い日本で読解力が下がっているという事実は、話をそう単純にはさせない。とはいえ、映像による視覚刺激がもたらす過剰な満足感は依存性が高く、それが言語を使う活動の時間と質を奪い、結果として言語使用に関する能力が落ちるのではないかという懸念は、筆者も共有できる。読むこと、書くことは負荷のかかる営みであり、その負荷を回避する手段が手元にあり続ける環境で、低得点層だけが増えているという構図は軽視できない。
海外の教育ニュース
【英国】PISA2025でイングランドは3分野とも順位上昇、科学で男子が女子を13点上回る性差が出現…DfEは「現状維持の理由にならない」
PISA2025でイングランドの平均点は数学492点(前回と同じ)、読解力497点(前回496点)、科学516点(前回503点)となり、OECD平均が低下するなかで順位は数学10位、読解力9位タイ(前回13位)、科学8位(同13位)へ上がった。2015年以降続いていた科学の下降傾向も止まった。その一方で、科学では男子が女子を13点上回る有意な性差が新たに生じ、過去3回の調査では見られなかった変化となった。数学の性差は前回と変わらず、読解力では女子が引き続き男子を上回っている。
恵まれた層と恵まれない層の差は数学89点、科学81点、読解力66点で、科学と読解力では2022年より縮小したが、数学では4点広がった。5,619人・183校のサンプルは、無回答者に英語母語話者や無料給食対象者、特別な教育的ニーズを持つ生徒がやや多く、比較には注意が必要だと報告書は指摘する。教育省は読解力と数学の得点が10年間改善していないことを認め、「他国の低下で順位が上がるだけでは不十分」として、学力と職業教育を両立させるエストニアを参考に改革を進める姿勢を示した。
出典:Schools Week「PISA 2025: Rise across the board, but science gender gap opens」(2026年9月8日)
筆者コメント
科学で男子が女子を上回る性差が現れたという点は、日本と共通した現象である。順位が上がった国と下がった国で同じ変化が起きているのだから、単純に学力の高低で説明できる話ではない。一方で、こうした性差がみられない国も多いという事実もある。だとすれば、生物学的な適性の違いに帰すよりも、その国の社会の中で男女のキャリアプランニングがどう異なっているのか、つまり将来どのような仕事や生き方を思い描くかという段階での違いが、科学への興味や到達度に反映されているのではないだろうか。どの国で性差が生じ、どの国で生じないのかを比べることが、この問いに答える手がかりになる。
【豪州】PISA2025で読解力・数学が過去最低に…授業の騒がしさは80か国中69位、2週間で欠席した生徒44%
PISA2025でオーストラリアの15歳の読解力と数学の得点は調査開始以来の最低となり、20年にわたる学力低下が続いた。科学は前回からわずかに改善し、順位は科学・読解力10位、数学16位でOECD平均は上回るが、実施機関ACERは、読解力は2000年比で約2年分、数学は2003年比で2年強の学習分だけ遅れていると説明している。
学級の規律の指標は改善したものの80か国中69位にとどまり、教室に騒音や混乱があると答えた生徒は41%(OECD平均31%)、調査前2週間に1日以上欠席した生徒は44%(同24%)と高かった。シンクタンクは授業妨害を学力停滞の主因に挙げている。クレア連邦教育相は、英国が20年前に同様の授業改革を行い今回順位を上げたことを引き合いに改革の継続を訴え、学校でのスクリーンタイムを減らす必要性にも言及した。新領域「デジタル世界での学習」では532点(OECD平均500点)と強みを示した。
出典:ABC News「Australian students record worst-ever reading and maths results in international PISA test」(2026年9月8日)
本記事の要約は各出典記事の内容にもとづき、筆者が要点を整理したものです。


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