教育ニュースまとめ 2026年9月4日|部活動改革に155億円、NY市がAI学習ツールを禁止

教育時事

部活動改革の来年度予算要求は155億円。前年度当初の57億円から、一気に3倍近くまで積み上がった。今日は国内3件、海外3件を取り上げる。予算と並んで、スポーツ6団体の連携、デジタル教科書の検定方針、そして米国のAI学習ツール禁止と、オーストラリアの教室で起きている問題行動と教師をめぐる論争である。

国内の教育ニュース

部活動改革に155億円を概算要求、部活動指導員1万7,320人分・小学校体育専科教員の地域クラブ活用も

スポーツ庁と文化庁は2027年度概算要求に、部活動改革関連で155億円を計上した。2025年度補正予算の82億円、2026年度当初予算の57億円からの大幅な拡充で、両庁は今年度を「改革実行期間」の初年度と位置づけ、休日については2028年度末までに全部活動の地域展開を目指している。自治体には休日の地域クラブ活動経費のほか、コーディネーター配置や人材バンク設置など体制整備費の3分の1を補助し、部活動指導員1万7,320人分の配置費用も要求した。スポーツ庁はさらに、小学校の体育専科教員を地域クラブ活動の指導者として活用する補助金事業を新たに始める。

出典:日本教育新聞「部活動改革に155億円 スポーツ庁・文化庁概算要求」(2026年9月3日)

筆者コメント

予算が拡充されたこと自体は良いことである。だが、まだ足りない。何より、この恩恵が実際に子どもたちの手に届くのかが問われる。以前、外部指導員の方から話を聞いたことがあるが、最低賃金に近い報酬でハードな仕事を担っていた。地域展開が進んでも、教師が担ってきた負担が指導員に移るだけでは、搾取の対象がすげ変わっただけになってしまう。指導員の処遇を含めて子どもに届く形のシステムづくりと、そのための予算拡充に、今後も取り組んでいきたい。

サッカー・バスケなどスポーツ6団体が初の連携「BALANCE IS BETTER JAPAN」始動

日本サッカー協会、日本バスケットボール協会、日本ハンドボール協会、日本ラグビーフットボール協会、全日本軟式野球連盟の5競技団体と日本スポーツ協会が9月2日、共同記者発表を行い、子どものスポーツ環境づくりに競技横断で取り組む「BALANCE IS BETTER JAPAN」の発足を発表した。6団体がこの目的で協働するのは初めてとなる。背景には、スポーツに親しむ子どもの減少と体力低下、運動する子としない子の二極化、早期専門化によるオーバーユースやバーンアウト、勝利至上主義による暴力・暴言・ハラスメントといった課題があり、部活動改革で子どものスポーツ環境が大きく変わることも意識されている。「Less Pressure」「More Collaboration」「More Fun」の3つのステートメントを掲げ、複数競技を体験できるマルチスポーツイベント、団体間の共通プログラム開発、指導者養成カリキュラムでの内容検討、競技の枠を超えた指導者研修などを進める。

出典:日本バスケットボール協会「9月2日 スポーツ団体連携に関する共同記者発表開催のご報告「BALANCE IS BETTER JAPAN」」(2026年9月2日)

筆者コメント

こうした取り組みは本当に重要である。スポーツの本質はプレイにある。ならば、プレイとは何かという議論が必要になる。毎年、甲子園大会を見るが、なぜスタンドで応援する野球部員をクローズアップして美談にするのだろうか。彼らは野球部員でありながら、野球をプレイできていない。そして、その環境をつくっているのは大人なのである。早期専門化や勝利至上主義に歯止めをかけるという今回の声明は、まさにこの「スポーツの本質とはなにかという問いに向き合うものだと受け止めたい。

デジタル教科書の検定で「動画の量」に上限設定へ、外部サイトへのリンクは認めず

文部科学省は9月2日の教科用図書検定調査審議会の部会で、デジタル教科書の検定改善の骨子案を示し、教科書に含める動画の量に教科の特性に応じた上限時間を設ける方針を明らかにした。6月に成立した改正学校教育法でデジタル教科書が正式な教科書に位置づけられたことを受けた検討である。現行の紙の教科書でも二次元コード先の動画が1点で合計5時間を超える例があり、動画は視聴中に児童生徒が受動的になりやすいとして、技能習得や観察・実験、言語活動など教科ごとの特性に応じて上限を定める。デジタル部分は発行者が責任を持って編集・管理できる範囲に限定し、外部サイトや教科書外の教材へのリンクは認めない。

出典:日本教育新聞「デジタル教科書 動画の量に上限設定へ」(2026年9月2日)

筆者コメント

スクリーンタイムを減らすというのは、どの国でも大きな課題なのだろう。動画で分かった気になれる易しさや手軽さには、一定の反作用があるということである。個人的には、学習に限らず、あらゆる局面において、負荷を越えていくことこそが生きることの本質だと考えている。手軽さや聴覚刺激、視覚刺激的快楽には依存性がある。大人はまだ分別がきく(という想定)が、子どもはその快感に抗えないとみられているのだろう。酒、たばこと同じ扱い。

海外の教育ニュース

【米国】ニューヨーク市が小中学校でAI学習ツールを禁止、ロサンゼルスも同様の措置

全米最大の学区であるニューヨーク市公立学校は9月2日、小学校・中学校段階でのAIを活用した学習ツールの使用を禁止し、就学前〜2年生への学校端末の配布を取りやめ、3〜5年生は1日30分、6〜8年生は45分というスクリーンタイムの目安を示す新方針を発表した。マムダニ市長は「AI企業の目的は利益だが、公立学校の目的は生徒だ」と述べた。メンタルヘルス支援などを行う「コンパニオン型チャットボット」は全学年で禁止し、特別支援教育や英語学習者には例外を設ける。高校生は審査済みの5つのツールを使う試行プログラムに限って利用を認め、約38の教材のAI機能はオフにする。同市は2022年末にChatGPTを遮断した後、方針を転換してAI政策室を設置した経緯があり、今回の再転換には「拙速な反応で、低所得層の子どもがAIに触れる機会を失う」との批判もある。ロサンゼルス統一学区も生徒のAI使用の一時停止を決めた。

出典:Education Week「New York Restricts AI in Elementary and Middle Schools. Will Other Districts Follow?」(2026年9月2日)

筆者コメント

これは、日本でデジタル教科書の動画コンテンツを減らすという議論と、同じ位置づけにあるように見える。手軽に答えに到達できる道具から、いったん子どもを遠ざけようという動きである。一方で、今後AIを使える者と使えない者との間に格差が生じるのも事実である。「低所得層の子どもが機会を失う」という批判は、その点を突いている。どの段階で何を学ぶべきなのだろうか。

【豪州】野党党首「学校が“反男子”イデオロギーを教えている」…教員組合は「悪意ある歪曲」と反発

オーストラリア国民党のカナバン党首は9月3日、州が資金を出す「リスペクトフル・リレーションシップス」カリキュラムが男子に「男性としての特権」を省みさせる「反男子」的な内容で、かえって若い男性を有害なオンラインコンテンツへ向かわせていると批判した。自由党のテイラー野党党首も一部の教師が教室で政治的な「アジェンダ」を推進していると同調した。同カリキュラムの枠組みに「男性の特権」という文言はなく、性別を問わず力や不平等が関係性に与える影響を考えさせ、男子には健全な形で男性性を探究させることを目指すと記されている。オーストラリア教育組合は「政治的利益のための悪意ある歪曲か、教職への完全な無知」と強く反発した。先週公表されたモナシュ大学の教師2,600人調査では78%が学校で性差別や女性蔑視を経験・目撃したと回答しており、カナバン氏は男性教員(現在は4人に1人)の増員を訴え、クレア教育相は「男子に女子を尊重することを教えるのは常識だ」と述べた。

出典:ABC News「Teachers hit back at Nationals claim about ‘anti-boy’ ideology in schools」(2026年9月3日)

筆者コメント

これは、学校が荒れているという問題の、次の文脈に位置づけられるのだろうか。子どもが女性教員の言うことを聞かないという状況があり、その背景として男子への指導のあり方が政治的な争点に持ち込まれた、という流れに見える。教室での問題行動、女性教員への負担の集中、そしてカリキュラムをめぐる政治的対立が一続きになっている。根深い問題である。

【豪州】授業時間の3分の1が生徒の問題行動で失われる、年間約12週分の学習損失…女性教師への影響が2倍

オーストラリアのシンクタンクCentre for Independent Studies(CIS)が全国の教師370人余りを対象に行った調査で、教師は平均して授業30分のうち9分を生徒の問題行動への対応で失っていることが分かった。年間に換算すると約12週分の学習が失われる計算で、調査担当者は「危機」と呼ぶに足る規模だと述べている。10人に1人の教師が過去1週間に健康と幸福感に大きな悪影響があったと答え、女性教師は男性の2倍の割合で深刻な影響を報告した。PISA2022では豪州の生徒の42%が数学の授業で騒音や混乱を報告し(OECD平均30%)、離職を考える教師のうち生徒の行動を理由に挙げる割合は2020年の25%から2024年の47%へ上昇している。CISは行動を明示的に教えるカリキュラムと、英国が2021年に実施したような全国調査を提言し、クレア連邦教育相も「大きな課題」だと認めた。

出典:ABC News「One-third of school time lost to student misbehaviour, report finds」(2026年9月3日)

筆者コメント

これは本当に衝撃的なデータである。授業時間の3分の1、年間で12週分が失われているというのだから、オーストラリアの学校教育はいったいどうなっているのか。しかも女性教師への影響が男性の2倍という点は、単なる学級経営の問題では済まない。なぜこのような状態になってしまったのか。スクリーン使用の増加や家庭の学校への支持の低下といった仮説も示されているが、その背景を掘り下げてみたいと興味が出てくる。

本記事の要約は各出典記事の内容にもとづき、筆者が要点を整理したものです。

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