次期学習指導要領で、体育の運動領域の名前が変わります。小学校3・4年は低学年と同じ「運動遊び」に、中学校1・2年は小学校高学年と同じ「○○運動」になります。競技の名前が領域名に出てくるのは、中学校3年からです。
この記事は、2026年7月10日のワーキンググループでこの案がどう議論され、3か月後の審議まとめでどう決着したかを並べたものです。
本文は、議事録と審議まとめに書かれていることの整理です。筆者の見方は末尾に分けています。
このシリーズについて
文部科学省は2026年10月8日、体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループ第11回(2026年7月10日開催)の議事録を公開しました。この回は、ワーキンググループの取りまとめ(案)を委員に諮り、意見を受けて修正の方針を確認した回です。
つまり、ここで出た意見のうち何が通り、何が通らなかったかは、10月5日に確定した審議まとめと突き合わせれば確かめられます。議事録だけを読んでも、審議まとめだけを読んでも出てこないところです。このシリーズでは、論点を一つずつ取り上げて、どんな案が出て、どんな意見が出て、その場でどう扱われ、3か月後にどうなったか、の順に並べます。
今回の論点 4年ごとの三つの段
体育の内容は、学年のまとまりで区切られています。取りまとめ(案)は、この区切りを4年ごとの三つの段として再整理する方針を示しました。小学校4年まで、小学校5年から中学校2年まで、中学校3年から高校卒業まで、の三つです。4年ごとという区切り自体は現行と変わりません。変わるのは、各段に与えられた名前と、そこに置かれる領域名です。
会議で出た意見 発育発達の話に読まれないか
この4・4・4の説明について、佐藤(豊)委員から懸念が出ました。説明の冒頭が発育発達曲線から始まっているため、身体的な発達を重視した昔の改訂のようなメッセージに読まれかねない、という趣旨です。委員は、「中学校はもう持久走やってればいいよ、高校は筋トレやりなさいみたいな形のメッセージととらえられると、趣旨が違うかな」と述べています。
友添主査は、現行の4・4・4制が身体的な側面に寄せて読まれがちであることを認めたうえで、文の区切り方を変える案をその場で示しました。「神経系の発達が完成に近づく時期」で文を切らず、次の文に続ける、という案です。主査は「ここは区切らないで繋げたほうが、多分誤解がないだろうと思うんですね」と述べています。
引用はいずれも第11回議事録から。発言者名は、議事録に明記されているものだけを使っています。
3か月後、審議まとめはこうなった
10月5日の審議まとめで、三つの段はこう書かれています。長いですが、一文であることが分かるように全文を引きます。
系統性は大きく4年ごとのまとまりで捉え、神経系の発達が完成に近づいていく小4までは幼児教育段階との接続を踏まえた「各種の運動の基礎を培う時期」、筋骨格系や呼吸循環器系が発達する中2までは「多くの領域の運動を経験しスポーツの基礎に触れる時期」、運動機能に係る発達が完成に近づくとともに理論を踏まえて一層スポーツ等を楽しむことができる中3以降は「卒業後も運動やスポーツに多様な楽しみ方で豊かに関わることができるようにする時期」として再整理する。なお、体育科・保健体育科は体力の向上を直接の目的とするものではないことを踏まえ、発育発達の特徴を捉えつつ、バランスの良い資質・能力の育成を図ることに十分留意が必要である。
審議まとめ 第2部第2章(10)体育、保健体育(印字p.267)
会議で出た二つの求めが、どちらも入っています。発育発達の記述で文が切れておらず、「神経系の発達が完成に近づいていく小4までは」と、そのまま段の名前へつながっています。そのうえで、「体力の向上を直接の目的とするものではない」という一文が後ろに足されました。この一文は、資料編の図(保体⑭)の「改善の方向性」にも同じ趣旨で置かれています。
領域名は、どこで何に変わるか
領域のまとまりについて、審議まとめはこう書いています。
内容のまとまりは、運動に関する領域については、「体つくり運動」「器械運動」「陸上運動」「水泳運動」「表現運動」「ボール運動」「武道」(小4~中2段階の中学校をイメージした例示)を基本とする。
審議まとめ 第2部第2章(10)体育、保健体育(印字p.267)
学年ごとの対応は、資料編の図に示されています。

図で赤字になっているのは、小学校3・4年の六つすべてと、中学校1・2年の陸上運動・水泳運動・表現運動・ボール運動、そしてスポーツ理論です。同じ中学校1・2年でも、体つくり運動・器械運動・武道は黒のままです。現行の名称と並べると、次のようになります。
| 学年 | 現行(平成29・30年告示) | 改善イメージ |
|---|---|---|
| 小1・2 | 体つくりの運動遊び/器械・器具を使っての運動遊び/走・跳の運動遊び/水遊び/表現リズム遊び/ゲーム | 変更なし |
| 小3・4 | 体つくり運動/器械運動/走・跳の運動/水泳運動/表現運動/ゲーム | 体つくりの運動遊び/器械・器具を使っての運動遊び/走・跳の運動遊び/水遊び/表現リズム遊び/ゲーム |
| 小5・6 | 体つくり運動/器械運動/陸上運動/水泳運動/表現運動/ボール運動 | 変更なし |
| 中1・2 | 体つくり運動/器械運動/陸上競技/水泳/ダンス/球技/武道 | 体つくり運動/器械運動/陸上運動/水泳運動/表現運動/ボール運動/武道 |
| 中3 | 同上 | 体つくり運動/器械運動/陸上競技/水泳/ダンス/球技/武道 |
| 高校 | 体つくり運動/器械運動/陸上競技/水泳/ダンス/球技/武道 | 変更なし |
二つの向きがあります。小学校3・4年は、現行の「器械運動」「走・跳の運動」等から、低学年と同じ「運動遊び」の名称へ延びます。中学校1・2年は、現行の「陸上競技」「水泳」「ダンス」「球技」から、小学校高学年と同じ「○○運動」へ戻ります。その結果、競技の名前が領域名に現れるのは中学校3年からになります。
なお、審議まとめ本文の例示には「(小4~中2段階の中学校をイメージした例示)」と付記されていますが、図では小学校4年までが「運動遊び」です。本文の括弧書きと図の対応は、文書からは読み取りにくいところです。また、図では小学校3・4年の「ゲーム」も赤字になっていますが、名称自体は現行と同じです。
図の右端の凡例によれば、実線が必修、点線が選択です。中学校3年以降で実線で囲まれているのは体つくり運動とスポーツ理論で、器械運動・陸上競技・水泳・ダンス・球技・武道は点線です。
同じ節で、求める技能は下げられている
領域名の話と同じ節に、技能の水準についての記述があります。まず、学習の趣旨がこう確認されます。
運動やスポーツを通した学習は、特定の種目等に係る力(競技力)を育てることを目的とするものではなく、児童生徒が運動等に取り組む中で試行錯誤したり目標を達成したりしながら、発達の段階に応じた「動き」「運動の行い方」「運動との関わり方」等を学ぶとともに、運動等の楽しさや喜びを味わったりすることがその趣旨である。
審議まとめ 第2部第2章(10)体育、保健体育(印字p.271)
そのうえで、到達点が引き下げられます。
児童生徒が、各自の状況等を踏まえつつ仲間とともに運動やスポーツの楽しさを十分に味わうことができるようにするためには、指導内容が過度に積み上がりすぎないようにすることが必要である。こうした観点から、高2以上(最終段階)で示す技能について、現行の中3~高1程度で示している程度を位置付けることを基本とした上で、全体の系統性を整理する。
審議まとめ 第2部第2章(10)体育、保健体育(印字p.271)
小学校4年までについても、「具体的な運動のやり方」の示し方を改め、「動き」の習得を軸にする方向が同じ節に示されています。
言えること、言えないこと
- 言えること 4年ごとの三つの段という枠組みは維持され、各段の名前が与えられた。領域名は、小学校3・4年が低学年と同じ「運動遊び」に、中学校1・2年が小学校高学年と同じ「○○運動」になる方向が示された。競技名が領域名に出てくるのは中学校3年から。
- 言えること 発育発達の記述が身体的側面に寄せて読まれることへの懸念は、文の区切り方の修正と、「体力の向上を直接の目的とするものではない」という一文の追加という形で反映された。
- 言えないこと 領域名は確定していない。資料編の別の図(保体⑱)では「ボールを使っての運動遊び(仮)」のように(仮)が付されている。図にも「具体的な指導内容は更に検討」との注記がある。
- 言えないこと 技能の具体的な水準も決まっていない。「現行の中3~高1程度を基本とした上で、全体の系統性を整理する」という方針が示された段階で、各領域の例示がどうなるかはこれから。
- 言えないこと 小学校3・4年が「運動遊び」になることで、技能の形成が小学校5年から中学校2年に圧縮されるのかどうかは、この文書からは読み取れない。入口を遅らせる幅と、最終段階を下げる幅を比べる数字は示されていない。
筆者の見方
ここから先は、文書に書かれていることではなく、筆者の見方です。
三つの段は、遊び、運動、スポーツという順に名前が動いていく。領域名が真ん中で「○○運動」になり、中学校3年から競技名に戻るのも、「体育理論」が「スポーツ理論」になるのも、同じ軸の上にある。
ただし、最後の段を「競技化」と読むとずれると思う。同じ節で求める技能の到達点は下げられており、落ちるのは最上段の、状況に応じて判断する層である。名前は競技に寄るのに、求める技能は競技から遠ざかる。最後の段の性格は、熟達ではなく、選択制と社会との接続、つまり卒業後の関わり方を手に入れることに置かれている。そう読むと、領域名の変化と技能水準の引き下げは、ひとつの方向を向いていることになる。
出典
- 文部科学省「教育課程部会 体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループ(第11回)議事録」(会議は2026年7月10日、掲載は2026年10月8日) 議事録
- 中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日) 掲載ページ
- 小学校学習指導要領(平成29年告示)、中学校学習指導要領(平成29年告示)、高等学校学習指導要領(平成30年告示)


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