教員養成改革の経緯|諮問・論点整理・審議のまとめ(連載2/3)

教育時事

共通で学ぶことは厳選し、そのぶん一人ひとりが自分の強みを伸ばす。審議のまとめが示しているのは、全員を同じ形に育てる養成からの転換である。

連載の第2回である。第1回では、教員養成の審議まとめに意見を出せること、締切が10月19日であることを共有した。今回は、その審議まとめがどこから来たのかを追う。突然出てきた案ではない。三つの日付をたどると、何が問われ、何が絞られ、何が制度の形になったのかが見えてくる。

なぜ、いま多様化なのか

これから追う三つの文書は、いずれも「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策」という同じ題名を共有している。つまり、最初の諮問の段階で、問いはすでに多様な専門性をどう確保するかに置かれていた。しかも「加速する」という語が入っている。ゼロから始める話ではなく、すでに動いているものを速める、という立て付けである。

背景にあるのは、学校が引き受ける仕事が広がり続けている一方で、教職を志す人の数は細ってきている、という二つの流れである。質を上げたい。しかし、人も確保したい。この二つを同時に満たそうとするところから、多様な専門性という言い方が出てくる。

三つの日付

諮問が令和6年12月25日。論点整理が令和7年10月15日。そして審議のまとめが令和8年9月17日である。答申は年内が予定されている。諮問から審議のまとめまで、一年九か月がかかっている。

審議のまとめの正式な名前は「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について(審議のまとめ)」という。論点整理のほうは、末尾が「方策に関する論点整理」となっているだけで、前半は同じである。同じ問いを、二段階で詰めてきたことが名前からも分かる。

論点整理で言われていたこと

論点整理は、大きく四つの章で構成されている。教職課程の在り方、採用と研修の在り方、社会人等の教職参入、そしてそれらを有機的につなぐ方策である。

教職課程については、共通性と多様性の両立が必要だとされ、教職課程のなかだけで完結する教員養成(原文では「狭義の教員養成」)から、各大学が育成する教師像を明確にしたうえで大学全体の学びのなかで行う教員養成(同じく「広義の教員養成」)へ、という転換が示されている。共通内容を厳選し、そのぶん学生が自分の専門性を追求できるようにする、という考え方である。免許制度については、必要単位数の見直しが挙げられているが、この段階では「見直しも含めて検討する」という方向の提示にとどまっていて、具体的な数字は出ていない。

教師の育成は、教育職員免許法等に基づく教職課程(狭義の教員養成)の中だけではなく、各大学等が育成する教師像を明確にした上で、大学全体の学び(広義の教員養成)の中でなされるべきであり、その学びの中においては、共通で学ぶ内容は厳選し、学生が自らの強みや専門性を高めることのできる柔軟なカリキュラムとすべきではないか。

論点整理「【基本的な考え方】(1)教職課程の在り方(総論)」より

一人でも多くの優秀な者が教職を目指してくれるよう、単位数の見直しも含めて検討することが必要ではないか。

論点整理「【主な論点と議論の方向性】」より

気づくのは文末である。論点整理は、ほとんどの記述が「〜ではないか」で終わる。断定ではなく、問いの形で並べられている。これが「論点を整理する」文書の作法なのだと思う。

社会人の参入をめぐる記述は、読んでいて具体的である。企業に籍を置いたまま学校で働く、在籍型出向という形が中心に据えられ、しかも段階的に進めることが書かれている。まずシニア人材から始める。企業にとってキャリアの選択肢が広がる利点が大きく、本人もマネジメントや専門の知見を持っているからである。そこで実績を積んで認知が広がってから、若手・中堅へ広げる。企業が長期の派遣を補償できるかという課題があるためだ。人をどう動かすかの段取りまで書き込まれている。

上記を踏まえれば、学校のニーズや実情を踏まえつつ、派遣者の質を担保した上で、例えば、まずはシニア人材から始めて実例を増やし、その中でメリット、デメリットを把握、伝播することで、企業、学校双方が社会人の教職登用の良さを実感し、それを若手、中堅世代の従業員まで拡大していくという流れが考えられるのではないか。

論点整理「(5)企業等に在籍しながら教師として勤務する際の任用形態の在り方」より

審議のまとめで制度の形になったこと

審議のまとめの柱も三つで、論点整理と対応している。教職課程の改革、採用・研修の在り方、多様な社会人参入の容易化である。変わったのは、抽象度である。

教職課程では、基礎的な内容を厳選したうえで「強み専門性」の学修を位置付ける、という形になった。教職課程に加える内容も具体化され、幼児・児童・生徒の多様な特性の理解と包摂、学級経営、教育の方法・技術及びデジタル学習基盤が挙がっている。教育実習については、負担軽減のためのガイドラインを作り、一部を学校体験活動として努力義務化する、というところまで書かれた。

「大学における養成」に立ち返り、学士の学位課程と教職課程の結節点となる「強み専門性」に係る学修20単位程度を標準的な免許状の授与要件とすること(基礎と強み専門性の2つの柱)を基本とする。

審議のまとめ Ⅲ-1-(3) より

「20単位程度」という数字が出てきた。論点整理の段階では「単位数の見直しも含めて検討する」だったものが、要件の形になっている。

免許制度は、基礎的・標準的・上級という三段階に再編され、上進を進めるという形になった。社会人参入のほうも、特別免許状の基準の具体化、大学院の新しい教育課程での免許授与の検討、小学校における算数・理科等の専科免許の新設、高等専門学校の卒業者への免許取得の道、奨学金返還支援制度の構築の検討、と並んでいる。

論点整理が方向を示す文書だったとすれば、審議のまとめは制度の設計図である。この一年で起きたのは、その移行だった。

その移行は、文末に出ている。論点整理が「〜ではないか」で終わっていたのに対して、審議のまとめは「〜とする」「〜が必要である」で終わる。問いが、決めごとに変わった。一年のあいだに何が起きたのかは、中身を読み比べる前に、文末を見るだけでも分かる。

学習指導要領の改訂と、同じ土俵にある

見落とされやすいが、この改革は学習指導要領の改訂と連動している。論点整理は、教育課程企画特別部会が掲げる改善の方向と連動させることを明記している。審議のまとめのほうも、教職課程に加える内容を指導要領改訂と結びつけて説明し、中学校の「情報・技術科」への対応の検討を挙げている。

論点整理のほうは、冒頭の「本論点整理の位置付け」で、教育課程企画特別部会が示した三つの方向――「主体的・対話的で深い学び」の実装(Excellence)、多様性の包摂(Equity)、実現可能性の確保(Feasibility)――に触れたうえで、こう書いている。

「学びをデザインする高度専門職としての教師」が3つの改善の方向性を支える基盤として位置づけられている。

論点整理「本論点整理の位置付け」より

つまり、子どもが何を学ぶかの設計と、その授業をする人をどう育てるかの設計が、同じ時期に、互いを見ながら進んでいる。学習指導要領を、一緒に読むシリーズで扱っている改訂と、この連載は地続きである。

二つの方向が、同時に動いている

ここまでを並べ直すと、この改革には方向が二つある。一つは、専門性を高める方向である。強み専門性に20単位を求めること、免許を三段階に再編して上進を促すことは、こちらにあたる。もう一つは、裾野を広げる方向である。特別免許状の基準の具体化、大学院の新しい教育課程からの免許授与、高等専門学校の卒業者への道、奨学金返還支援制度の検討は、教職に入ってくる入口を増やす話である。

この二つは、別々のことを言っているようで、同じ絵の表と裏として読むこともできる。入口を増やせば、入ってくる人の経歴も、それまで学んできたことも揃わなくなる。揃わない人たちを一つの集団として機能させようとするとき、全員に同じ中身を同じ量だけ課すやり方は、おそらく収まりが悪い。共通部分を厳選して、そのぶん一人ひとりの強みを立てるという設計は、入口を広げたことの帰結としても読める。

このブログでこれまで扱ってきた、各国の教員不足をめぐる状況や、大学3年生を対象とした特別選考の広がりも、同じ土俵の上にある。入口の話と、育て方の話は、つながっている。

次回の第3回では、争点を扱う。裾野を広げることと、専門性を確保すること。この二つは、どこでぶつかるのか。

出典

  • 中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について(審議のまとめ)」(令和8年9月17日)本体PDF/概要PDF
  • 同部会「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策に関する論点整理」(令和7年10月15日)本文PDF
  • 教員養成部会のページ(第163回・令和8年9月30日の配付資料を含む)

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