神奈川県は、中学校の部活動を引き受ける企業・大学・スポーツ文化団体を公募し始めた。教師の熱意に頼ってきた構造を、自治体が組み替えにかかっている。今日は国内2件、海外3件。部活動の地域展開と高校卒業後の進路、米国の特別支援教育とバイリンガル教育、韓国の留学生数の動きを取り上げる。
国内の教育ニュース
神奈川県、公立中の部活動地域展開に協力する企業・大学・スポーツ文化団体を募集
神奈川県は2026年8月26日、公立中学校の部活動の地域展開に協力できる企業・大学・スポーツ文化団体などの募集を開始した。県内に事業所を有する団体のほか、県内拠点がなくても継続して協力できる活動内容を有する団体も対象となる一方、個人と市町村は応募できない。背景には生徒数と部活動数の減少がある。県の統計では公立中学校の生徒数は2015年度比で県全体7.0%減、県西地域では17.7%減、三浦半島地域では14.6%減となっており、部活動数も同期間に5,525部から5,234部へ291部(5.3%)減った。県は2026年12月に市町村・学校・地域クラブ等を対象とした相談窓口を開設し、課題解決策の提案や協力企業の紹介を行う予定である。
出典:ReseEd(リシード)「神奈川県、公立中「部活動の地域展開」協力企業など募集」(2026年8月28日)
筆者コメント
部活動の地域移行に関する議論には、二つの格差が反映されそうである。ひとつは資源の地域格差であり、将来的に人口動態の偏りが進めば、協力できる企業や大学、団体が地域によって大きく異なることになる。もうひとつは世帯の経済格差であり、活動の担い手が地域に移るとき、費用の負担がどこにかかるかは避けて通れない論点である。だからこそ自治体はしっかりサポートしなければならない。これまでは、そこを教師の熱意のみに甘えてきた。神奈川県が企業・大学・団体を広く募り、相談窓口まで設ける枠組みは、その甘えから抜け出す前提を整える動きとして見ておきたい。
埼玉県、高卒の就職率9.3%で調査開始以降最低に
埼玉県教育委員会は2026年8月27日、2026年3月の中学校等卒業者および高等学校等卒業者の進路状況調査(速報)を公表した。全日制・定時制高校の卒業者5万1,201人のうち就職者総数は4,737人で、卒業者に占める割合は9.3%。前年度より0.1ポイント低下し、調査開始以降で最低となった。大学等進学率は66.8%で前年度より0.1ポイント低下し、専修学校等への進学・入学率は18.7%だった。中学校段階では全日制課程への進学率が88.5%と0.4ポイント上昇した一方、通信制課程は7.5%と0.3ポイント低下している。いずれも速報値で、確定値は2027年3月に公表される予定である。
出典:ReseEd(リシード)「埼玉県、高卒の就職率9.3%で過去最低…大学等進学率66.8%」(2026年8月28日)
筆者コメント
どうしてだろうか、と考え込んでしまう数字である。高卒での就職がこれだけ細っていくとき、そこで問われているのは学歴をめぐる語り方そのものではないか。学歴格差は神話なのか、それとも学歴格差はないというほうが神話なのか。どちらの立場も、それらしい根拠を持ち出すことはできる。だが、就職の割合が調査開始以降で最低になったという事実は、少なくとも高校を出てすぐ働くという道が現実の選択肢として痩せてきていることを示している。そのうえでどちらが神話なのかを、腰を据えて問い直す必要がある。
海外の教育ニュース
【米国】バイリンガル教育が高校段階でほとんど提供されない構造的理由
移民政策研究所(MPI)の新しい報告は、二言語で教科内容を教えるバイリンガル教育プログラムの多くが小学校段階にとどまり、中等教育段階の英語学習者が恩恵を受けられていない実態を指摘した。米国の中等教育段階には230万人以上の英語学習者が在籍している。報告はカリフォルニア、イリノイ、ニューメキシコ、ニューヨークの教育者・政策専門家・教員養成の教員への聞き取りに基づく。障壁として、測定可能な目標や財源を定めた州・学区の方針の不在、プログラムが通学区域外に置かれること、生徒が選択科目とバイリンガル科目のどちらかを選ばざるをえないことが挙がった。加えて、教員養成課程が小学校向けに組まれているため、中等段階のバイリンガル教員は自らカリキュラムを作成したり翻訳したりせざるをえないという。
出典:Education Week「Why Bilingual Education in High School is Hard to Find」(2026年8月28日)
筆者コメント
カリキュラム開発がなされていないという問題なのですね、というのが率直な受け止めである。指導する意思や制度上の位置づけがあっても、中等段階向けの教材と課程が用意されていなければ、現場の教員が自前で作るほかない。そこが最大の詰まりだという指摘は理解できる。ただ、一点確認しておきたいことがある。ここで想定されている対象は、中学生・高校生になってから複数言語を習得したいという生徒なのだろうか。それとも、すでに家庭で別の言語を使っている生徒が学びを継続することを指すのだろうか。どちらを主たる対象と見るかによって、必要なカリキュラムの姿はかなり変わってくるはずである。
【米国】通常学級教員の42%しか「障害のある生徒への指導調整」に自信なし
全米学習障害センター(NCLD)とWestEdが通常学級・特別支援の教員1,654人を対象に実施した全米代表調査で、学習障害のある生徒に合わせて指導を調整する自信をもつ通常学級教員は42%にとどまることがわかった。経験年数による差は大きく、経験3年未満の初任層では通常学級教員の17%しか完全な自信をもてないのに対し、同じ初任層でも特別支援教員は60%が自信ありと回答している。通常学級教員の自信は経験とともに伸びるが、特別支援教員は早期に頭打ちとなる。また、学校の管理職チームが学習障害のある生徒の学習ニーズに応える知識と研修を備えていると考える教員は3分の1未満だった。報告書は、協働の時間を確保できる日程設計の研修と、報酬を伴う「マスターティーチャー」職の設置を提言している。
出典:Education Week「How Teachers Feel About Adapting Instruction for Students With Disabilities」(2026年8月27日)
筆者コメント
そうですよね、と頷いてしまう結果である。特別な配慮が必要になるうえに、その配慮が本当に合っているのかどうかが、やっている側にはわからない。手ごたえを確かめる手段がないまま調整を続けるのだから、自信がもてないのはむしろ自然だと思う。むしろ興味があるのは逆のほうで、自信があると答えた人たちがどういう人たちなのか、である。経験を通じて確かめる手段を持っているのか、相談できる同僚がいるのか、それとも合っているかどうかを問わずに済む条件で働いているのか。そこが見えてくると、研修で何を渡せばよいのかもはっきりしてくるはずである。
【韓国】留学生が21.3%増の30万7,464人、初めてベトナムが最多に
韓国教育部が公表した年次教育統計調査によると、高等教育機関に在籍する留学生は前年比21.3%増の30万7,464人となり、初めて30万人を超えた。国籍別ではベトナムが31.5%で、調査開始の2003年以来はじめて中国(25.7%)を上回って最多となった。一方、高等教育機関の在籍者数は302万人から307万人へ1.8%増にとどまり、機関数は421から416へ5校減少している。幼稚園から高校までの児童生徒数は約560万人から約540万人へ減り、直近5年で最大の落ち込みとなった。学校数も1年で140校減の2万233校で、うち幼稚園が167校減と減少の中心を占めた。移民的背景をもつ児童生徒は21万838人と前年比4.3%増で、逆方向の動きを示している。
出典:The Korea Herald「Number of international students in South Korea jumps 21%」(2026年8月26日)
本記事の要約は各出典記事の内容にもとづき、筆者が要点を整理したものです。


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