一節 #007 です。ここからは「運動遊び」を読みます。審議まとめ(令和8年10月5日)が、小学校4年生までを運動遊びとする方向を示したことで、いま最も動いている語のひとつです。まずは、現行がこの語をどう使っているのかを押さえます。
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今回の一節
現行の小学校学習指導要領、第1学年及び第2学年の目標です。
(1) 各種の運動遊びの楽しさに触れ,その行い方を知るとともに,基本的な動きを身に付けるようにする。
(2) 各種の運動遊びの行い方を工夫するとともに,考えたことを他者に伝える力を養う。
(3) 各種の運動遊びに進んで取り組み,きまりを守り誰とでも仲よく運動をしたり,健康・安全に留意したりし,意欲的に運動をする態度を養う。小学校学習指導要領(平成29年告示)第2章 第9節 体育 第2 各学年の目標及び内容〔第1学年及び第2学年〕1 目標
三つとも、主語が「各種の運動遊び」です。中学年と高学年の目標が「各種の運動」で始まるのに対して、低学年だけが「遊び」を背負っています。
では「各種の運動遊び」とは何か。解説が定義しています。
各種の運動遊びとは,児童の発達の段階を踏まえ,ねらいとする動きを遊びの要素を取り入れて行うものであり,児童が成功体験を得やすいように課題やルール,場や用具等が緩和された体つくりの運動遊び,器械・器具を使っての運動遊び,走・跳の運動遊び,水遊び,ゲーム及び表現リズム遊びを指す。
解説 体育編 p.35
定義の中身は二つです。ねらいとする動きを、遊びの要素を取り入れて行うこと。そして、課題やルール、場や用具が緩和されていること。緩和の理由は「児童が成功体験を得やすいように」と書かれています。
では、なぜ低学年だけなのか。解説は、体つくり運動系を説明する箇所で、その理由を書いています。
低学年は「体つくりの運動遊び」とし,その内容も全て「運動遊び」として示している。これは,児童が易しい運動に出会い,伸び伸びと体を動かす楽しさや心地よさを味わう遊びであることを強調したもので,以下の各領域においても同様の趣旨である。これは,入学後の児童が就学前の運動遊びの経験を引き継ぎ,小学校での様々な運動遊びに親しむことをねらいとしている。
解説 体育編 p.25
「就学前の運動遊びの経験を引き継ぎ」。ここが現行の理屈です。幼稚園や保育所で遊んできたものが先にあり、小学校の体育がそれを受け取る。その受け取りの期間が低学年の2年間で、受け取るための呼び名が「運動遊び」である、と読めます。
領域名も、この線で引かれています。低学年は、体つくりの運動遊び、器械・器具を使っての運動遊び、走・跳の運動遊び、水遊び、ゲーム、表現リズム遊び。中学年になると、体つくり運動、器械運動、走・跳の運動、水泳運動、ゲーム、表現運動。高学年では、陸上運動、ボール運動と、競技の名に近づいていきます【原文・p.24の表】。「遊び」という語が付くのは、小学校1年生と2年生だけです。
なお、この並びがいまの形になったのは前回の改訂です。体つくり運動系の低学年だけが「体つくり運動」から「体つくりの運動遊び」へ新たに変わり、他の領域は従前どおり「運動遊び」のままでした【原文・p.11】。低学年を遊びで通すという形は、前回の改訂で揃えられたものです。
ひとこと:「遊び」は、易しくした運動のことではない
(ここからは私の解釈です)読み落とされやすいのは、「引き継ぎ」の一語だと思っています。
運動遊びを「運動の簡易版」と読むと、低学年は中学年の準備期間ということになります。けれども解説が書いている理屈は、順番が逆です。就学前から続いてきた遊びが先にあって、学校がそれを受け取る。だから低学年は、何かの前段階ではなく、それ自体が引き継ぎの場として置かれていることになります。
目標の(1)にある「基本的な動きを身に付ける」も、解説では「運動種目として成立する以前の基本的な動きを身に付けること」と説明されています【原文・p.36】。種目の手前にある動き、という位置づけではありますが、ねらいは種目に向かって急ぐことではありません。解説は、それぞれの運動遊びの楽しさに触れるようにすることを大切にしながら、と断っています。
授業の作り方で言えば、課題やルールや場を緩和することは手段であって、目的ではない、ということになります。易しくすれば遊びになるわけではありません。

運動遊びって、要するにルールを簡単にした運動のことですよね。

緩和することは解説にも書かれています【原文】。ただ、その理由は「成功体験を得やすいように」です。簡単にすること自体が目的ではありません。それに、低学年を遊びで通す理由として解説が挙げているのは、就学前の経験を引き継ぐことのほうです【原文】。簡易版と読むか、引き継ぎと読むかで、授業の作り方は変わってくると思います。
読者への問い
低学年の2年間を「引き継ぎの期間」と読むなら、引き継ぐ相手である就学前の遊びを、私たちはどれだけ知っているでしょうか。小学校の側から見た「遊びの入口」と、幼稚園や保育所の側から見た「遊びの続き」は、同じものを指しているでしょうか。
次回の一節 #008 では、審議まとめがこの枠を小学校4年生まで広げようとしていることを読みます。2年間だった引き継ぎが4年間になると、何が変わるのか。領域名と、その先の技能の扱いが動きます。
出典
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」第2章 第9節 体育 第2 各学年の目標及び内容〔第1学年及び第2学年〕1 目標
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編」p.11, p.24, p.25, p.35, p.36 https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_010.pdf

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