教育ニュースまとめ 2026年9月11日|運動部員は欠席20%減、米国の運動部優先論と部活動改革初年度

教育時事

運動部に所属する生徒は、欠席日数が2割少ない。米国の元教育委員が示したこの数字は、学業の側が運動部のやり方に学ぶべきだという主張とともに提示されている。今日は国内3件、海外2件。中教審の学校安全部会の新設、スポーツ庁長官の就任1年の総括、神戸での「校塾連携」拠点、そして米国の運動部優先論と英国のAI指針をめぐる議論を取り上げる。

国内の教育ニュース

中教審に学校安全部会を新設、第4次学校安全計画の策定へ議論開始

文部科学省は9月9日、中央教育審議会初等中等教育分科会の学校安全部会(第1回)をオンラインで開催し、配布資料を公表した。議題は「第4次学校安全の推進に関する計画」の策定に関する諮問と、学校安全の現状・課題の整理で、第3次計画の進捗状況(令和7年度)や検討課題、災害共済給付データの活用、ウェルビーイング向上との関係などが示された。第5期教育振興基本計画(令和10〜14年度)の諮問概要も参考資料として提示されており、次期学校安全計画は教育振興基本計画と歩調を合わせて策定される見通しである。

出典:文部科学省

筆者コメント 新しい部会を作ることの必要性は分かる。学校安全は第4次計画の策定を控え、専門の審議の場を持つ意味はあるだろう。しかし、こうしたグループはそれぞれが自らの立場から必要なことを主張する形になるため、現場の仕事は積み上がる一方になる。拡充を担う部署があるなら、縮小を担当する部署も同時に作るべきではないか。しかも、そうした部署は仕事を終えたら解体される仕組みにしておけばよい。作ることと同じくらい、減らすことと終わらせることを制度に組み込んでほしい。

河合スポーツ庁長官が記者懇談で就任1年を総括、部活動改革「改革実行期間」初年度に言及

スポーツ庁は9月10日、河合純一長官による記者との懇談(第85回、9月9日実施)の内容を公開した。長官は就任からほぼ1年を振り返り、第4期スポーツ基本計画の策定、アジア・アジアパラ競技大会の準備、公立中学校の部活動地域展開を進める6年間の「改革実行期間」の初年度という3点を節目として挙げた。全国中学校水泳競技大会での日本中学校体育連盟・日本水泳連盟との意見交換や、日本体育・スポーツ・健康学会第76回大会での基調講演も報告され、中高生のスポーツ環境を持続可能なものにするとの姿勢が示された。

出典:スポーツ庁

筆者コメント

これまでの長官が切り込めなかった部活動に、就任早々から切り込んでいる点は素晴らしい取り組みだと思う。改革実行期間の初年度ということもあり、最初は困難なことも多いだろう。しかし、海外のモデルをそのまま持ち込むのではなく、やりながら日本のやり方に適した形を模索していくしかない。体育・スポーツ・健康学会での基調講演にも表れているように、大学や研究者と上手く連携していってほしい。現場の実践と研究の知見が往還する形で改革が進むことを期待している。

神戸海星女子学院×アップ教育企画、閉学する大学校舎で「校塾連携」拠点を2027年4月開設

アップ教育企画は9月10日、学校法人海星女子学院と協働し、2026年度末で閉学する神戸海星女子学院大学の本館棟(神戸市灘区)に新教育拠点「神戸海星キャンパス校(仮称)」を2027年4月に開設すると発表した。拠点には大学受験指導の研伸館、高校受験指導の開進館、個別指導の個別館、習い事教室、会員制自習室を設け、小・中・高校生に教育サービスを提供する。併設の神戸海星女子学院中学校・高等学校の生徒には同社の指導ノウハウを学院の教育に合わせて提供し、従来の「学内予備校」を超える「校塾連携」と位置づけている。

出典:ReseEd

筆者コメント

閉学する大学の校舎を学習塾の拠点に転用するというが、その校舎の整備に補助金や税金が使われていた場合はどうなるのだろうか。公金は特定の進学用塾を潤わせるために投入されているわけではない。私学助成や施設整備の経緯を含めて、公的な資金がどのように扱われるのかは確認されるべきである。加えて、お受験対策の系統は、現代の本当の学力論争とは真逆の方向へ動くものであるように思われる。学力観が問い直されている今、学校と塾が一体化することが何を意味するのか、冷静に見ておきたい。

海外の教育ニュース

【米国】「フットボールの季節は学校にとって重要すぎる」…運動部が学業より優先される構造を元教育委員が論考

Education Weekは9月9日、アーカンソー大学のロバート・マラント氏による論考を掲載した。氏は元学校区の教育委員として、米国の高校では過去1世紀をかけて運動部が学業に対して優位に立ったと論じている。校長や教育委員の多くが元運動部員・元コーチであること、コーチとして採用された「教員」が多い一方でその逆は見られないことなど、人事慣行が運動部優先を固定化してきたと指摘する。一方で、運動部員は欠席が20%少なく慢性的欠席も3分の1少ないという調査を引き、複数年にわたるコーチと生徒の関係が帰属意識と成長を支えているとも評価し、学業の側が運動部から学ぶべきだと結んでいる。

出典:Education Week

筆者コメント

めちゃくちゃ面白い記事である。私の経験上だが、日本でも体育系の者が人事慣行として管理職に就くケースがみられていた。そういうことがあるから逆に、体育・スポーツ系は管理職になれないという県もあったくらいである(これは本当の話だ)。米国で語られる人事慣行の構造は、日本にも形を変えて存在している。生徒の学習に目を向ければ、コーチと生徒との関係形成が学びを支えるという点は、確かに日本でも言われてきたことである。今回、運動部員の欠席が少ないというエビデンスが出てきたのは、経験的に言われていたことに裏付けがなされたということだろう。しかし、学業が運動部の側に学ぶべきだというのは強烈な発言である。

【英国】学校は「明確なAI指針を切望」…下院教育特別委員会で専門家が証言、業務削減効果には疑問も

英国下院の教育特別委員会で9月9日、学校におけるAI利用をめぐる公聴会が開かれた。National Institute of Teachingの担当者は、校長らがAI研修を受けても「結局何をすればよいのか」と戸惑っていると証言し、教員組合NASUWTは教育省の指針が放任的だとして明確な利用ルールを求めた。AIによる教員の業務削減効果については「結論は出ていない」との見方が示され、オックスフォード大学の研究者はAIは業務を減らすのではなく「再構成」するにすぎないと述べた。不利な地域の学校ほど教員不足を理由にテクノロジーへ依存し、問題を深刻化させる恐れがあるとの指摘もあった。

出典:TES

筆者コメント

とても興味深い論旨である。AIは教員の業務を減らすのではなく「再構成」するという指摘は、色々と考えさせられる。ある作業が短縮されても、出力の確認や技術の管理といった別の作業が生まれるのであれば、負担の総量は変わらず、仕事の中身が入れ替わるだけだからである。また、不利な地域の学校ほど教員不足を理由にテクノロジーへ依存し、その結果として格差が拡大するという仮説は、確かに筋の通るものである。AIが教育格差を埋めるという期待とは逆の方向に働きうるという点は、日本で議論する際にも念頭に置いておきたい。

本記事の要約は各出典記事の内容にもとづき、筆者が要点を整理したものです。

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