「関わり方」は、いま何を指しているのか|一節 #004 WG取りまとめ(案)の語を追う

「関わり方」は、いま何を指しているのか? 一節 #003 2030改訂編

一節 #004 です。前回(#003)は、現行の解説で「する・みる・支える・知る」が「運動との多様な関わり方」という名前で書かれていることを読みました。今回は、その「関わり方」という語が、次期に向けた審議資料でどう扱われているかを読みます。

タグ:目標/見方・考え方/審議

今回の一節

ここからは【審議段階】の資料です。2026年7月10日の第11回ワーキンググループに出された「WG取りまとめ(案)」は、補足イメージ③で、この四つと「関わり方」という語を、次のように整理し直しています。

(多様な)楽しみ方 運動やスポーツを「する」「みる」「支える」「知る」ことや、運動やスポーツを媒介として「集う」「つながる」等により、その楽しさや喜びを享受することまでを含みこむ表現

(運動との)関わり方 今般の資質・能力の再整理において、運動を行う際の態度に関する要素(「公正」「協力」「責任」「参画」「共生」「健康・安全」等の要素)を示し表現

体育・保健体育、健康、安全WG取りまとめ(案)p.14 補足イメージ③「整理イメージ」(2026年7月10日 第11回)【審議段階】

並べるために、現行の解説の一文をもう一度置きます。

「すること」だけでなく「みること」,「支えること」,「知ること」など,自己の適性等に応じて,運動やスポーツとの多様な関わり方について考えることを意図している。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編 p.18【原文】

ひとこと:「関わり方」という語が錯綜している

現行と並べると、名前の付け替えが二つ同時に起きています。現行で「関わり方」と呼ばれていた「する・みる・支える・知る」は、「集う」「つながる」を加えて「楽しみ方」という名前になる。そして空いた「関わり方」という名前は、現行では「態度」として学びに向かう力・人間性等に置かれていた公正・協力・責任などに付け替えられる。語そのものは消えていません。指す相手が入れ替わろうとしています【審議段階】。

ただ、同じ文書の中を通して読むと、この整理は文書の中でも徹底されていません。補足イメージ①には「運動やスポーツとの『する、みる、支える、集まる、つながる』等の関わりを通じた」「全ての児童生徒に運動やスポーツとの多様な関わりを保障する」とあり、四つの意味で「関わり」が使われています(p.12【審議段階】)。補足イメージ⑱には「運動やスポーツに多様な関わり方で親しむ姿等を一層積極的に価値づけ」とあり、「楽しみ方」に改名したはずの側が「関わり方」と呼ばれています(p.29【審議段階】)。さらに「学びに向かう力・人間性等」の要素には「それらを通じた人との関わり等に親しみ」という、三つ目の意味、人との関わりが出てきます(p.6【審議段階】)。

(ここからは私の解釈です)つまり案の中で「関わり(方)」は、少なくとも三通りに読めます。現行どおりの「運動との関わり」、新しく定義された「態度要素」、そして「人との関わり」。定義のページでは二つ目に一本化すると言いながら、他のページでは一つ目と三つ目が生き残っている。引っ越しの途中で、荷物が両方の家にある状態です。この記事を書きながら私が気になったのは、その錯綜の中で、二つ目と三つ目が近づいて見えることでした。新しい「関わり方」に置かれた公正・協力・責任・参画・共生は、健康・安全を除けば、どれも仲間や集団との関係で意味をもつ語です。目標の素案でも、現行の「自己の適性等に応じた」に代わって「自他の運動との関わり方」と、「自他」という語が入っています(p.14【審議段階】)。看板は「運動との関わり方」のままで、中身は運動を通した他者との関わりへ重心を移しているように、私には見えます。

ゼミ生
ゼミ生

じゃあ、次の指導要領では「関わり方」は他者との関わりのことになる、と言っていいですか。

栗田
栗田

そこまでは言えません。案は一貫して「運動とどう関わるのか」「自分はどう関わるのか」の話として書いています【審議段階】。他者との関わりは、その内側に置かれている。だから今の段階で言えるのは、「関わり方」という語が何を指すのか、審議の中でまだ定まっていない、ということまでです。答申や解説でどう落ち着くかを見てから判断したいところです。

ただし、これらはすべて「補足イメージ」として示された案の段階の文言です。ここで決まったことのように語るのは、しないでおきます。

読者への問い

明日の授業で子どもが計測係や応援に回っているとき、あなたはそれを「みる」「支える」という運動との関わり方として見ているでしょうか。それとも、公正や協力といった仲間との関わり方として見ているでしょうか。あなたが体育の中で大事にしたい関わり方はどちらでしょうか。

出典

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