今日は、お金の配り方の話が続く。
2026年9月24日の教育ニュースから、気になった4件を取り上げる。国内は、高校授業料の実質無償化が北海道の中学生保護者の進路選択に与えた影響を示した道教委の調査と、成立学園中学が生成AIを「考える相棒」として使う探究プログラムを実施したというニュースの2件。海外は、英国で教員の半数近くが5年以内の離職を検討しているという議員の独自調査と、地域の教育格差是正には10年単位の資金が必要だとした事業評価報告の2件である。
国内の教育ニュース
高校授業料の実質無償化、北海道の中学生保護者で「私立志向」が鮮明に…無償化がなければ公立希望75%、実際は48%に低下(道教委調査)
北海道教育委員会は、2026年4月に始まった私立高校授業料の実質無償化が進路選択に与えた影響についてアンケート結果をまとめた。7月にオンラインで実施し、中学1〜3年生と高校1年生、その保護者から計約3万8,500件の回答を得た。進路選択に「影響がある(あった)」と答えた保護者は6割を超え、影響があると答えた中学生の保護者では、自宅から通える公立高校を希望する割合が48.0%と、無償化がなかった場合の想定(75%)から大きく下がった。通学可能な私立高校の希望は24.6%で、無償化がない場合の5.5%を大きく上回る。2026年度に私立高校へ入学した生徒は前年より約1,000人増えており、道教委は「公立高校の魅力化」を課題に挙げている。
出典:日本教育新聞(2026年9月21日)該当記事/北海道教育委員会「高校の授業料無償化に係る影響分析」
筆者コメント
大阪でも、この地殻変動的な変化ははっきりと感じられる。私立高校は定員をはるかに超える生徒を抱え、教育が崩壊する手前まで来ている。逆に公立高校では、中堅校までもが教育困難校になろうとしている。北海道の調査が示す私立志向の高まりは、決して一地域の現象ではない。この変化は今後さらに増幅し、各所に何らかの影響を及ぼすおそれがある。そうなる前に、事前に何らかの規制を設けたり、公立校を守るための取り組みを講じたりしなければならない可能性もある。
成立学園中学、生成AIを「考える相棒」にする5日間の探究プログラム…生徒のAI観が「楽な道具」から「考えなければ考えてくれないもの」へ
成立学園中学・高等学校(東京都北区)は8月17日から21日までの5日間、中学1〜3年生7人を対象に、教育サービス会社CoBloomと共催で生成AIを活用した特別探究プログラムを行った。生徒は3チームに分かれ、物価高やSNSの数字への執着など身近な課題を探究。「理解・課題発見・構造化・真因究明・解決策構築」の探究フレームワークと、AIへの役割設定やファクトチェック依頼などの「プロンプトの型」を使って対話を重ね、約1分の動画作品にまとめた。受講前は全員がAIに「便利」「楽」というイメージを持っていたが、受講後は人間が問いを立てて主導することの重要性を挙げる声に変わったという。
出典:教育家庭新聞(2026年9月23日)該当記事
筆者コメント
AIの利便性には、つい依存したくなる性質がある。一方で、それによって時間的な効率化が本当に図れるのかどうかは未知数である。さらに、格差のなかで低い水準に置かれている者ほど、テクノロジーへの依存によってネガティブな影響を受けやすい。こうした知見は少しずつ集まりつつある。だからこそ、AIを楽をするための道具ではなく「考える相棒」として位置づける今回のような取り組みの成果が、後々に見えてくることを期待したい。
上のコメントの「AIの利便性には、つい依存したくなる性質がある」について:2026年9月21日の教育ニュースまとめ(マイクロソフトが学校AIの依存を促す機能を禁止)で扱っています。
海外の教育ニュース
【英国】教員約1,000人調査で半数近くが「5年以内に離職を検討」、週平均54時間勤務…自民党の教育担当議員が「新政権は教員の業務負担の転換点に」と寄稿
英自由民主党の教育担当スポークスパーソンで下院教育特別委員会委員のキャロライン・ボーデン議員がSchools Weekに寄稿し、今夏に約1,000人の教員を対象に行った独自調査の結果を示した。半数近くが今後5年以内の離職を考え、10%は1年以内に辞める予定と回答。4分の3以上が頻繁にまたは常に燃え尽きを感じ、平均で週54時間働いているという。同議員は、教員確保・定着戦略が2019年のまま更新されていないと批判し、給与改定の完全な財源措置、法定労働時間の徹底、柔軟な働き方の指針などを新教育相に求めた。
出典:Schools Week「This should be a watershed moment for teacher workload」(2026年9月21日)
筆者コメント
他国でも、教員の離職や業務負担が深刻な問題を引き起こしているのだろうか。今回の寄稿を見る限り、英国も例外ではないようだ。一方で、イギリスの教師の給与水準はうらやましくもある。もっとも、その高さは物価の高さによって相殺されてしまうのかもしれない。給与が高く見えても実質的な豊かさにつながっていないのだとすれば、離職の問題も見え方が変わってくる。この点は確かめておきたい問いである。
【英国】地域の教育格差是正には「10年単位の資金」が必要…「オポチュニティ・エリア」事業(1億800万ポンド)の評価、細切れ予算で効果が短命に
バース大学・ブリストル大学・ダラム大学の研究チームは、2017〜2022年に実施された「オポチュニティ・エリア」事業の評価報告を公表した。社会移動が停滞する12地域に総額1億800万ポンドを投じた事業だが、資金は最初の3年分のあと1年ずつ2回延長される形で配分され、欠席や停学・退学の改善も一時的にとどまった。報告は、背景にある課題は3年では解決しにくいとして、地域主導の教育施策への予算を10年単位で確保するよう提言している。
出典:Schools Week「10-year funding needed for devolved education, argues report」(2026年9月22日)
筆者コメント
これは日本も同じである。地域の教育格差を是正するには、短期で細切れの予算ではなく、長期にわたる資金の裏付けが欠かせない。だが、日本の議論では、高校無償化などのように、むしろ格差をより広げる可能性のある施策のほうが目立っている。冒頭で取り上げた北海道の調査が示す私立志向の高まりも、その一端と見ることができるだろう。
本記事の要約は各出典記事の内容にもとづき、筆者が要点を整理したものです。


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