今日は、教師の待遇の話が続く。
英国政府が、今年度の教員給与3.5%引き上げを学校予算の追加削減なしに賄えると確約した。財源は地方公務員年金制度の再評価で浮いた事業主負担分である。今日は国内から香川県の時間外在校等時間、海外から英国の給与措置と米国の職業技術教育(CTE)教員の学び直しの3件を取り上げる。いずれも、教員の処遇と専門性という一本の線でつながっている。
国内の教育ニュース
香川県立校の時間外在校等時間、平均36時間20分に減少も依然厳しい実態
香川県教育委員会は8月下旬、県立学校に勤務する教員の働き方改革の進捗状況を公表した。2025年度1年間の平均時間外在校等時間は36時間20分で、前年から30分の減少にとどまった。2026年度に入ってからも各月で前年度を下回ってはいるものの、削減幅はわずかである。国は「デジタル社会の実現に向けた重点計画2026」で2029年度までに月30時間への削減を掲げているが、現状の推移とは開きがある。
出典:日本教育新聞「香川県立校、時間外在校等時間減少も依然厳しい実態」(2026年9月16日)
筆者コメント
「教師は大変だ」という趣旨の記事は、もう十分である。時間外勤務は減らせるものではないし、むしろ増える可能性の方が高い。ならば取るべき手はシンプルで、イギリスのように数年かけて賃金を上げていくことである。処遇が上がれば応募が増え、応募が増えれば優秀な人材が集まる。そのうえで、集まった優秀な人材が知恵を出し合えるような仕組みを制度として入れていかなければならない。どんな企業も産業も、まず人材から始まる。そして没落するときも、まず人事から始まる。これは自明のことのはずである。
海外の教育ニュース
【英国】政府が教員給与3.5%引き上げの「全額財政措置」を確約
ルーシー・パウエル英教育相は2026年9月16日、全国教育組合(NEU)のダニエル・ケベデ書記長あての書簡で、今年度の教員給与引き上げを学校予算の追加削減なしに賄えると確認した。政府は7月に9月からの3.5%引き上げを決定していたが、うち約1.8ポイント分は各学校が既存予算から捻出する前提であり、NEUはその不足額を約4億6,000万ポンドと試算してストライキ投票の構えを示していた。転機となったのは地方公務員年金制度(LGPS)の再評価で、事業主負担率が4.9ポイント引き下げられる。政府はこの削減分を回収しないと明言し、その分を給与原資に充てられるとした。NEUはこれを「イングランドの全教員に対する完全財政措置された賃上げ」と評価する一方、校長組合NAHTは個々の学校レベルで本当に全額措置と言えるか詳細を精査する必要があるとしている。
出典:Schools Week「Government ‘commits to fully funding’ teacher pay rise, NEU reports」(2026年9月16日)
筆者コメント
この種のニュースは、日本には本当に伝わってこない。時間外勤務がどうだ、仕事量がどうだと言う前に、シンプルに給与を上げればよいのである。イギリスの教師の平均給与は1250万円だという。物価も高いが、それは日本も同じようになりつつある。であれば、国が国家予算のごくわずかを割いてでも、教育に力を入れる姿勢を見せるべきだ。票につながらない政治はしない——それがこの国のおかしなところである。
【米国】職業技術教育(CTE)の技能は急速に変わる、教員は追いつけるのか
Education Weekは2026年9月16日、キャリア・技術教育(CTE)の拡大にともない、担当教員が産業界の最新技能を自力で学び直さざるを得ない実態を報じた。ミズーリ州サウステック高校で救急救命士(EMT)課程を担当する教員は、急速に更新されるEMT関連技術に追いつくための研修費を自費で負担しているという。CTEは政策的に拡大が続く一方で、教員の継続的な専門性開発に対する学区の財政支援は追いついていない。産業側の技術更新サイクルと、公教育の研修制度の時間軸が噛み合っていないことが、構造的な課題として浮かび上がる。
出典:Education Week「Skills Change Fast in CTE. Can Teachers Keep Up?」(2026年9月16日)
筆者コメント
教師の仕事は増え続ける、という長期的な見立てを後押しする記事である。社会が発展すれば、その分だけ教師の側に学ぶ必要性が生じる。教える内容が現場で更新され続ける以上、それは避けられない。だからこその専門職論であったはずだ。専門職とは、学び続けることを職務の内側に組み込んだ職であり、その学びを個人の持ち出しに委ねてよいという話ではない。行政はここにリソースを投入しなければならない。
本記事の要約は各出典記事の内容にもとづき、筆者が要点を整理したものです。
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