教育ニュースまとめ 2026年10月22日|困難校に、誰が行くのか

教育時事

今日は、人がどこへ行くかの話が続く。

教員の確保をめぐる三件を取り上げる。国内は、OECDが公表した「図表でみる教育2026年版」をもとにした記事である。海外は、米国メンフィスで成績の低い学校ほど教員の離職が深刻だという報道と、オーストラリアで困難を抱える学校に教員を送り、定着させると学力が伸びたという分析である。

国内の教育ニュース

異業種から教職に転じた教員、日本は0.9%──OECD「図表でみる教育2026」

OECDが9月29日に公表した「図表でみる教育2026年版」をもとにした記事である。同調査をもとにした報道によれば、加盟国の多くで教員不足が続いており、理数系や地方、社会経済的に不利な地域での人材確保がとりわけ難しくなっている。日本は年度当初に教員を配置できなかった割合が0.4%と低い一方で、異業種から教職に転じた教員の割合は0.9%にとどまり、OECD平均の8.4%を大きく下回った。開きがより大きいのは、満足度である。文部科学省の仮訳によれば、給与に満足している教員の割合は28.6%(OECD平均38.7%)、給与以外の勤務条件に満足している教員の割合は37.3%で、OECD平均68.4%との差は31ポイントに達する。給与での差が約10ポイントであるのに対し、勤務条件での差はその3倍である。日本の教員が満足していないのは、まず賃金の額というより、働き方そのものだということになる。

出典:日本教育新聞「異業種から教職に転職、日本は0・9% OECD調査」(2026年10月9日)

満足度の数値は、文部科学省による仮訳「図表でみる教育2026年版・日本に関する記述(教育職員関係)」によるものです。

筆者コメント

OECDの調査からは、どの国でも人材確保が難しくなっており、とりわけ社会経済的に不利な地域での確保が問題になっていることが読み取れる。日本については、勤務条件や給与への満足度がOECD平均より低い水準にあることが示された。改革を求めるのであれば、より優秀な人材が入ってくる条件を整えることが大事なのだろうと思う。異業種から教職に転じた教員の割合が0.9%とOECD平均の8.4%を大きく下回る点については、いったん教職の外に出た人材は戻ってこないのではないか、という予測が立つ。これは、他業種から人材を引っ張ってこようとする今の教員養成の議論とも関連している。しかし、聖職論から見れば、他業種を経験した人ほど勤務条件をシビアに見て職を選ぶ。若い世代になるほどその考え方は基本線になっていく。日本もこの問題にちゃんと対峙しなければならない。

上のコメントにある「他業種から人材を引っ張ってこようとする今の教員養成の議論」については、教員養成改革の争点|決まったことと、まだ決まっていないことで、社会人等の入職の拡大として扱っています。

海外の教育ニュース

【米国】成績の低い学校ほど教員の離職が深刻──メンフィスの離職率は約20%

メンフィス・シェルビー郡学区では2024年に教員の約20%が退職し、州全体の約12%を大きく上回った。成績が低い学校ほど離職が多く、集中的な介入の対象となっている14校のうちの1校では教員の約3分の2が入れ替わった一方で、州の最高評価を得た学校では離職がゼロであった。教員は施設の不備、資源の不足、管理職との摩擦を理由に挙げている。学区は2%の昇給と残留者への1,000ドルのボーナスで対応しているが、教育長はこれ以上の賃上げは予算を圧迫すると述べている。

出典:Chalkbeat Tennessee「Teacher turnover is hitting lower-performing Memphis schools hardest」(2026年10月13日)

筆者コメント

この記事は、国内の一つ目のニュースと連動している。成績の低い学校ほど教員の離職が深刻だという構図は、以前取り上げたオーストラリアの事例、すなわち生徒の行動が過激になり、そこで葛藤を覚えた教員が離職に至るという話とも重なるのではないか。あくまで予想の域を出ないが、困難を抱える学校ほど教員が去っていくという循環が働いている可能性はある。他方で、シンプルに給与などの待遇の問題として見ることもできる。いずれにせよ、人材確保の難しさが特定の学校に偏って表れている点は、国内の議論にとっても示唆的である。

上のコメントにある「以前取り上げたオーストラリアの事例」は、2026年9月4日の教育ニュースまとめ(生徒の行動と教員の離職)で扱っています。

【豪州】困難校に熱意ある教員を送り、定着させると学力が伸びる──最大3.7か月分の上積み

Teach For Australia(TFA)の委託を受けたPeter Goss博士の分析で、TFAのパートナー校131校の9年生は、人口統計的に類似した522校より読解と数的思考の伸びが大きかった。関与が最も深い学校では、予測より最大3.7か月分多く学んでいたという。効果が大きかったのは、教員がプログラムに参加し、修了後も同じ学校で教え続けている場合であり、採用だけでなく定着が重要だと結論づけている。ただし、この分析はTFA自身の委託によるものであり、記事には効果量などの詳細は示されていない。

出典:The Educator「Teacher quality drives student outcomes in Australia’s most under-served schools」(2026年10月16日)

筆者コメント

困難校に熱意ある教員を送り、その教員を定着させられるかを扱ったこの記事は、非常に面白い。というのも、教員のキャリア形成上、困難校からどんどん遠ざかっていくライフキャリアが一般的になりやすいからである。それは筆者自身もそうで、研究者としてキャリアを作ろうとすれば、良い学生のいる良い大学に行きたいと考える。教育と研究は別だとは思うが、教育でも同じことが起こる。報酬が高く待遇の良い学校にみな行きたがるのは当然であり、そうした学校には、家庭の条件に恵まれた子どもが集まりやすい。そして、それを求める家庭がその地域に移住していくという連鎖が起こっている。

好循環の連鎖があるということは、逆に悪循環の連鎖もあるということである。教育困難校からは良い教員がいなくなり、良い教育がなくなり、さらにそうした教育を避けたい家庭が去っていく。結果として、負の側面が強化された集団極化、すなわち集団の特性が強化されてしまう循環が生まれる。これは放っておけば起きてしまう動きではあるが、だからこそ人為的なプロセスを介入させなければならない。具体的には、困難校で教えることが割に合う形にする、つまり十分な報酬をつけて人を送る、という手立てしかないのだと思う。

その意味で、熱意ある教員を送ることは負の連鎖を打開する一つの手立てであり、そうすると学力が伸びるというデータが出たのは非常に良いことである。ただ、それを制度として続けられるかどうかは、簡単ではない。途中に入る要素が多く、効果が本当に目に見えるかどうかもわからない。それでも、この構造は確かに存在している。そこにちゃんと手を入れられるかという懸念はあるものの、これは一つの打開策だと考える。

「熱意ある教員」はTFAのプログラムの枠組みで使われている言い方であり、それ以外の教員がそうでないという意味ではありません。131校・522校・最大3.7か月分は、いずれも出典記事に示された数字です。

本記事の要約は各出典記事の内容にもとづき、筆者が要点を整理したものです。

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