今日は、海外の三件を読む。
2026年9月21日の教育ニュースから、気になった海外の3件を取り上げる。英国の自由民主党が18歳までに100時間の就業体験を保証する「NEET危機を終わらせる」教育改革案を発表したというニュース、マイクロソフトが米教員組合AFTと学校向けAIのガードレールに合意し、依存を促す機能の禁止や児童生徒データのAI学習への不使用を約束したというニュース、そしてOECDが「教員不足」を特集テーマとするEducation at a Glance 2026を9月29日に公表するという告知である。
海外の教育ニュース
【英国】自由民主党が「NEET危機を終わらせる」教育改革案を発表…ポスト16の新バカロレア、18歳までに100時間の就業体験、個別ジョブコーチングを公約
英国の自由民主党は9月19日、ブライトンで開かれた党大会で、16歳以降の教育改革と就業体験・就職支援の強化により「NEET(教育・雇用・訓練のいずれにもない若者)の危機を終わらせる」とする政策を発表した。教育担当のムニラ・ウィルソン議員は「どの党よりも野心的な提案」だと述べた。労働党政権が14歳から職業教育の進路を導入する計画に対し、ウィルソン氏は進路決定には早すぎ、恵まれない家庭の子どもが職業ルートに「流し込まれる」恐れがあると批判。代わりにAレベルを発展させた新しいポスト16バカロレアをVレベル・Tレベルと並置し、学術・創造・技術の各分野を横断して学べる制度を提案した。加えて、18歳になるまでに全員に「100時間の就業体験と専門的エンリッチメント」を保証し、オランダやドイツを参考に年複数回の個別ジョブコーチングで5年計画を立てる支援を掲げた。政府は現在、中等学校に2週間(約70〜80時間)の就業体験を義務づけている。ウィルソン氏はNEET問題を学校だけの失敗ではなく、雇用税や規制強化で若者の採用を難しくした政府の経済政策の失敗だと位置づけた。所要財源については未公表で、Schools Weekが党に確認を求めている。
出典:Schools Week「Lib Dems vow to end NEET crisis with ‘ambitious’ reforms」(2026年9月19日)
筆者コメント
就業体験や就職支援の拡充によってNEETを減らそうとする方向性そのものは理解できる。だが、若者に雇用を保障するだけでは足りない。就いた職において、生活が一定水準以上に安定することまでが保障されなければならない。真面目に働いているのに生活が困窮するような仕事があってはならないのである。教育の側がいくら丁寧に進路を設計し、5年計画を立てさせても、その先に待つ仕事が人並みの生活を支えられないものであれば、若者を教育から労働へ送り出すこと自体が空しい営みになってしまう。ウィルソン氏自身がNEET問題を経済政策の失敗と位置づけているように、問われているのは教育改革と同時に、働く先の生活の質をどう担保するかである。
【米国】マイクロソフトが教員組合AFTと学校向けAIの「ガードレール」に合意…児童生徒データをAI学習に使わず、依存を促す機能を禁止、11月1日から全契約校に適用
マイクロソフトは、米国第2の教員組合である米国教員連盟(AFT)と交渉し、学校で使うAIツールにガードレールとプライバシー基準を導入することに合意した。児童生徒や教職員のデータをAIの学習に使わず、販売・広告・製品開発にも用いないと約束し、第三者監査による法的拘束力のある合意とされる。合意は「感情的な愛着や依存を育むよう設計された」AIコンパニオン機能や、学習課題に必要な時間を超えて子どもを引き留める仕組みを禁止し、ツールの仕組みを家庭に平易に説明する透明性措置も含む。11月1日から同社と契約する全学区に適用される。OpenAIとAnthropicもAFTと同様の協定を協議中と表明した一方、米国の学校向け教育技術で最大手のGoogleは対応を明らかにしていない。Googleは8月にGoogle ClassroomでK-12の児童生徒にGeminiを開放し、学校の混乱を招いていた。ニューヨーク市とロサンゼルスの2大学区が生徒のAI利用を1年間停止するなど反発が広がるなか、専門家は「大手すべてが署名しなければ実効性は限られる」「AIが教室に必要かという問いは残る」と指摘しつつ、個別学区の交渉負担を軽減する点は評価している。
出典:Education Week「Microsoft Commits to AI Guardrails for Schools. Will Other Tech Giants Follow?」(2026年9月15日)
筆者コメント
この記事から読み取れるのは、学校向けAIに依存性があることは、開発する企業の側ももはや明白な前提として認めているということである。感情的な愛着や依存を育むよう設計された機能を禁じ、学習課題に必要な時間を超えて子どもを引き留めないと約束すること自体が、放っておけばそうなるという事実の裏返しにほかならない。我が国では学校でのAI活用が推進される一方で、この依存性については正面から語られることが少ない。少なくともこの点だけは、教育委員会や学校が保護者や子どもに向けて周知してもよいのではないか。使うか使わないかの議論の前に、使えばどうなるかを知らせておくことが最低限の前提である。
【OECD】「図表でみる教育(Education at a Glance)2026」を9月29日に公表へ…今年の特集テーマは「教員不足」、どの国・地域で深刻か、教室への影響を分析
OECDは、加盟国等の教育の現状を国際比較する年次報告書「Education at a Glance 2026」を9月29日11時(中央ヨーロッパ夏時間)にパリで公表すると告知した。教育への参加、教育制度の財源と組織、学歴・就学・労働市場の成果などの国際比較データを収録する。今年の版は「教員不足(→9月19日の回)」を特集テーマとし、教員不足がとくに深刻な国・地域はどこか、不足が教室にどのような影響を及ぼすかを検証する。9月8日に公表されたPISA2025に続く、今秋のOECD教育指標の第2弾となる。公表に合わせたオンライン発表会では、コーマン事務総長の冒頭挨拶に続き、シュライヒャー教育・スキル局長が主要な調査結果を報告し、質疑に応じる。日本でも教員採用倍率の低下や特定教科の志願者偏在が続いており、国際比較の観点から注目される。
出典:OECD「Education at a Glance 2026」(2026年9月29日公表予定)
筆者コメント
国際比較は、日本の教育の特徴を知る上で重要な手がかりである。国内の議論だけを追っていると、教員不足も教員の働き方も日本固有の問題のように見えてしまうが、他国と並べてはじめて、何が日本に特有で何が先進国共通の構造なのかが浮かび上がる。今年の特集が教員不足であり、どの国・地域で深刻か、教室にどのような影響が出ているかまで踏み込むというのは、教員養成や教師教育を考える者にとって興味深い。日本の教員採用倍率の低下や教科ごとの志願者の偏りが、国際的にはどの位置にあるのかを確かめたい。
本記事の要約は各出典記事の内容にもとづき、筆者が要点を整理したものです。


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