教育ニュースまとめ 2026年9月7日|教師の残業「月30時間」へ、米6州の教員離職率は16%

教育時事

教師の時間外在校等時間を、2029年度までに「月30時間」へ。7月に閣議決定されたデジタル社会重点計画2026に、その数値目標が入った。今日は国内から、この削減目標と、大学院教育拠点の選定、Teach For Japanと自治体の連携という大学と教職をめぐる3本。海外からは、教育テクノロジーの評価をめぐる米国心理学会の提言と、離職した教員の行き先を追った米6州のデータ分析を取り上げる。いずれも「教育に携わる人の処遇と育ち」と「学びの中身」に関わる話題である。

国内の教育ニュース

世界トップレベル大学院教育拠点創出事業、2026年度は神戸大の1件を選定…文科省

文部科学省は9月3日、2026年度「未来を先導する世界トップレベル大学院教育拠点創出事業(FLAGs)」の選定結果を公表した。同事業は、徹底した国際拠点形成と産学連携教育を通じて、豊かな学識と国際性、高度な実践性をもつ博士人材の育成機能を高める大学院教育拠点の形成を支援するものである。2026年4月6日から5月29日までの公募で国公私立大学から10件の申請があり、日本学術振興会に設置された委員会の審査を経て、神戸大学の1件が選定された。

出典:文部科学省「令和8年度「未来を先導する世界トップレベル大学院教育拠点創出事業」の選定結果について」(2026年9月3日)

筆者コメント

神戸大学を含め、国公立大学の教員給与は本当に厳しい。55歳以降の教授くらいにならなければ年収1000万円を超えないと聞く。このような事業で選定を受けるのは、優秀な研究者の集まりであるはずだ。それに見合う報酬を上げてほしい。一方で、研究にはさほど関心がないように見える大手私立大学では、1400万から1600万円といった給与もあるようである。国は大学に対して、自分たちで金儲けをせよと求める。しかし大学は学術の機関である。ビジネスの論理に飲まれてしまうのはおかしい。拠点を選定して看板を与えるだけでなく、そこで働く人の処遇にまで政策の目が届いているかを問いたい。

教師の時間外在校等時間、2029年度までに「月30時間」へ削減…デジタル社会重点計画2026

2026年7月21日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」には、教育分野の施策として学校における働き方改革の推進が盛り込まれた。2029年度までに教育職員の1か月あたりの時間外在校等時間を平均30時間程度に削減することを目標とし、これは2025年に成立した給特法等改正法の附則に規定されたものである。2026年度からは、服務監督教育委員会ごとの教師の時間外在校等時間の平均を政策ダッシュボード等で可視化し、各教育委員会の主体的な見直しを促す。文部科学省が主担当となり、内閣官房・デジタル庁と連携して推進する。

出典:ReseEd「【デジタル社会重点計画2026】教師の残業「月30時間」に削減へ」(2026年9月4日)

筆者コメント

時間外の仕事を減らすことによって、よい人材は本当に来るのだろうか。学校には結局、必要な仕事があるのだから、削減の号令をかけても実際の負担は使命感の強い人に偏りそうな気がする。また、仕事や残業がないことを強みとして打ち出すというのは、その仕事の魅力とは別のものではないかと思う。私の周りの本当に優秀な人たちは、過酷な仕事であっても好んで取り組み、その代わりに高額な報酬を得るような仕事に従事している。教職の魅力を語るのであれば、時間の削減だけでなく、仕事の中身とそれに見合う処遇をどう示すかが問われる。

Teach For Japanと岐阜県山県市が連携協定…多様な専門人材の学校参画と「山県学園構想」を推進

認定NPO法人Teach For Japan(TFJ)は9月1日、岐阜県山県市と連携協定を締結した。教育に携わる人材の発掘・育成や、民間・地域の専門人材が学校現場に参画する仕組みづくりを進める。山県市は人口減少下でも市内の全小中学校(9小・3中)を統廃合せず、地域全体をひとつの学校のように連携させる「山県学園構想」を掲げている。TFJは2013年から多様な経験をもつ人材を選抜・育成して教員として送り出すフェローシップ・プログラムを展開し、累計389名を34都道府県に輩出してきた。2026年度は市内教員の強みや行動特性を把握して組織づくりを進め、2027年度にはフェローシップ・プログラムを通じた教員配置に着手する予定である。

出典:ReseEd「Teach For Japanと岐阜県山県市が連携協定…持続可能な教育実現へ」(2026年9月4日)

筆者コメント

この動きは、教員免許の価値がなくなっていく事象の一つとして捉えられる。民間や地域の専門人材が学校現場に入ることには、もちろんメリットもある。多様な経験をもつ人が子どもに関わることで、学校の中だけでは得られない学びが生まれる可能性はある。しかし、免許をもたない人材の参画が広がれば、大学で教員養成を受けて免許を取ることの意味は相対的に薄れていく。教員養成に携わる立場からすれば、これがどちらに転ぶかは注視しなければならない論点である。

海外の教育ニュース

【米国】「アプリへの没頭は学習ではない」…米国心理学会が教育テクノロジー評価の10提言

米国心理学会(APA)は9月3日、教育テクノロジーと子どもの学習に関する報告書を公表し、アプリ上のエンゲージメント指標を学習成果と混同してはならないと警告した。報告書は、学習目標を先に定めて成果で製品を判断すること、そのテクノロジーが何を置き換えているかを評価すること、研究に基づく学習方略を採用したツールを選ぶこと、大人の関与を実装の中心に据えることなど10の勧告を示している。APAのニコール・バーンズ氏は「本当の学習の試金石はアプリを閉じた後にある」とし、一律のスクリーンタイム禁止よりも、その技術が議論・遊び・読書・睡眠など何を奪っているかを問うべきだと述べた。ニューヨーク市など大規模学区でAI・端末利用の制限が広がる中、州・学区レベルでの調達基準の整備を求めている。

出典:Education Week「Students’ Tech Engagement Doesn’t Equal Learning, Psychologists Warn」(2026年9月4日)

筆者コメント

「アプリを閉じたあとにこそ、学びの本質がある」という言葉は正鵠を射ていると思う。問われるべきは、その学習が子どもの将来をどのように拓くのかである。アプリの中で楽しく取り組めた、うまくできたということと、学んだことを別の場面で使えることは別物である。易化の先には何もない。手軽に、負荷なく進められることを売りにする道具ほど、閉じた後に何が残るかを厳しく問わなければならない。そのうえで、子どもには内容の学習だけでなく、学び方の学習も必要である。道具をどう使えば自分の学びになるのかを学ぶこと自体が、教育の中身として位置づけられるべきである。

【米国】離職した教員はどこへ行くのか…6州データ分析、初任3年以内の離職リスクが7ポイント高

教育コンサルティング団体ERSが、コネチカット・ジョージア・ネブラスカ・ペンシルベニア・テキサス・ワシントンの6州における2020〜2025年の教員異動データを分析した報告を公表した。年間の教員離職率は2021-22年度の20%から2024-25年度には16%へ低下したが、離職の約4割は州外または教職からの退出で、残りは同一学校・学区内での役割変更が相当数を占めた。教職1〜3年目の教員は経験者より離職確率が7ポイント以上高く、テキサス州では緊急・代替免許で入職した教員の離職が特に目立った。特別支援教育は30年以上にわたり最も人手不足の領域であり、初任の特別支援教員へのメンタリングを強化したペンシルベニア州は離職率16%と6州で最低だった。

出典:Education Week「Where Do Teachers Who Leave Their Job Go? See the Charts」(2026年9月3日)

筆者コメント

非常に興味深い記事である。初任3年以内の離職リスクが高いという結果は、教職に就いた直後に理想と現実のずれに直面するリアリティショックが原因ではないかと考えられる。ただ、離職した人の行き先を追うだけでは半分しか見えない。逆に、同じ葛藤を抱えながら教職を継続している人たちのライフヒストリーも調べてみたい。彼らはどのようにしてその葛藤を乗り越えたのか。辞めた人と続けた人の分かれ目を、初任期の経験の語りから明らかにすることが、教員養成と初任者支援を考えるうえで欠かせないと思う。

本記事の要約は各出典記事の内容にもとづき、筆者が要点を整理したものです。

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