今日は、土台の話が続く。
2026年9月19日の教育ニュースから、気になった5件を取り上げる。国内は筑波大・柳沢正史教授のラスカー賞受賞と子どもの睡眠、関芳弘新文科相の就任会見、女子とプログラミングをめぐる保護者調査、海外はオーストラリアの教員不足によるクラスの分割・統合と、英国のキーステージ3アライアンスの発足である。
国内の教育ニュース
筑波大・柳沢正史教授がラスカー賞受賞、日本人8人目…改めて考えたい「子どもの睡眠」と学習・成長の関係
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構長の柳沢正史教授と米スタンフォード大学のEmmanuel Mignot教授が、睡眠と覚醒を調節する神経ペプチド「オレキシン」の発見と、その欠乏がナルコレプシーを引き起こすことの解明により、2026年アルバート・ラスカー基礎医学研究賞を受賞した。ラスカー賞は「ノーベル賞の登竜門」とも呼ばれ、日本人の受賞は8人目となる。記事はこの受賞を機に子どもの睡眠の重要性を整理しており、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が睡眠不足を肥満リスクや抑うつ傾向、学業成績の低下と関連づけていること、米国睡眠医学会が小学生に9〜12時間、中高生に8〜10時間の睡眠を推奨していることを紹介している。児童期には1日60分以上の身体活動と休日も同じ時刻の起床を、思春期にはスマートフォンを寝室に持ち込まないことや適度な運動習慣の維持を勧めている。
出典:ReseEd「筑波大・柳沢正史教授がラスカー賞受賞、改めて考えたい「子供の睡眠」の大切さ」(2026年9月18日)
筆者コメント
率直にすごいことである。ネット上では某インフルエンサーと対比的に描かれているようだが、これを機に睡眠についての正しい知識が広まることを願う。もう一つ注目したいのは、受賞会見で柳沢教授が、あらかじめ仮説を定めない探索的な取り組みが功を奏したと語っていた点である。仮説検証型の研究が主流となるなかで、この言葉は、地域や集団を対象とするコミュニティ研究の進め方に一つの示唆を与えるものかもしれない。
第2次高市改造内閣で文科相に関芳弘氏が就任…会見で「研究力の抜本的強化」と教職の魅力向上・奨学金返還支援の検討を表明
9月17日に発足した第2次高市改造内閣で文部科学大臣に就任した関芳弘氏(衆院兵庫3区、初入閣)が18日、就任会見に臨んだ。党の科学技術・イノベーション戦略調査会副会長などを務めた経験から、注力したい政策として研究力の抜本的強化を掲げた。学校や教師については「教師は本当に尊い仕事」とし、働きがいと働きやすさを実感できる環境整備や、教職に就いた人への奨学金返還支援などの経済的負担軽減を検討すると述べた。AIやデジタル教科書の活用については、適切に活用して一人ひとりの学びを充実させ、着実に学力を向上させることが重要だとして、有識者会議の議論を注視するとした。
出典:日本教育新聞(2026年9月18日)該当記事
筆者コメント
教職に就いた人への奨学金返還支援の検討そのものは、よいことだと思う。ただ、個人的に一言だけ言わせてもらいたい。私を含め、40歳から50歳あたりの世代はどうなるのか。その上の世代には、教員になれば返還が免除される支援があった時代がある。その下の世代は、就学支援が拡充された世代である。その間に挟まれた我々、いわゆる氷河期世代は、いつも制度の谷間に取り残されてきた。新しい支援策を歓迎しつつも、この世代の負担が置き去りにされたままであることは指摘しておきたい。
娘にプログラミングを習わせたい保護者は69%、IT・理系に興味を示す子どもは27%…理工系ジェンダーギャップの意識調査
女子向けオンラインプログラミングスクールを運営するGriteen(筑波大発ベンチャー)は9月16日、女の子の保護者100人を対象とした意識調査の結果を発表した。76%の保護者が理工系のジェンダーギャップを問題だと感じる一方、31%は自身の中に「理系やITは男の子の方が向いている」といった思い込みがあると回答した。子どもがIT・理系分野に興味を示していると答えた保護者は27%にとどまり、興味を示さない理由の最多は「どんな仕事かイメージが湧かないから」(53.2%)だった。一方で、スクールのサイトを見たうえで69%が「こういった習い事を習わせてみたい」と回答している。
出典:ICT教育ニュース「娘にプログラミングを習わせたい保護者は69%、IT・理系に興味がある子どもは27%=Griteen調べ=」(2026年9月17日)
筆者コメント
保護者の関心の高さは分かるが、中途半端なプログラミングの知識は、もはやAIに淘汰されていく。プログラミングという技能そのものの知識的価値は、すでにほとんど残っていないのではないか。習い事として子どもに何かを与えるのであれば、むしろ基礎的な学習や、体を動かすことに時間を使った方がよいと考える。それは、いま目の前の学びにとって即時的に有益であるだけでなく、将来にわたる心の健康にとっても効いてくるはずである。
海外の教育ニュース
【豪州】教員不足で1人の教員が最大90人を担当する「クラスの分割・統合」が常態化…ACT州の教員組合が再度のストを示唆
オーストラリア教育組合(AEU)のACT(首都特別地域)支部は9月17日、州政府の給与・労働条件の提示が要求を満たさなかったとして、来週にも教員と学校職員が再び業務を停止する見通しを示した。支部長のアンジェラ・バロウズ氏によれば、教員不足の結果として、担当教員が不在の際に生徒を他の教員に振り分ける「分割」や学級全体を1人の教員に預ける「統合」が避けられず、1人の教員が50人、場合によっては90人を教える事態が生じている。保護者団体の調査では分割・統合が週1回から隔週で起きており、1年間専門の数学教員がいない生徒もいるという。教育局が欠員や分割・統合のデータを収集していないため問題の規模が分からないことが課題とされ、教育局長は影響を可視化する自動データシステムを構築中だと説明している。
出典:ABC News「Frequent class ‘splitting’ disrupting Canberra students, as union flags further industrial action」(2026年9月17日)
筆者コメント
以前、オーストラリアでは子どもの問題行動が多すぎて授業に多大な支障が出ているという記事を取り上げたが、今回の報道を見ると、やはり問題は単発ではなく連鎖的に派生している状況のようである。教員が足りず、学級が分割・統合され、1人の教員が数十人を受け持つ。その環境で問題行動が増え、教員がさらに疲弊して離れていく。この連鎖は我が国でも、局所的には十分に起こり得ることである。対岸の火事として眺めるのではなく注視し、この事例から学べることを引き出しておく必要がある。
【英国】「キーステージ3は見過ごされてきた」…DfE支援のKS3アライアンスが中等学校移行期の実践事例を全国募集
英国教育省(DfE)が支援する「キーステージ3(KS3)アライアンス」が9月16日に発足し、11〜14歳の初期中等教育段階について、効果的な実践や研究に加え「うまくいかなかった取り組み」の事例を全国から募集する呼びかけを始めた。アカデミー・トラストのCEOであるBecks Boomer-Clark氏とLesley Powell氏が共同議長を務め、17人のトラスト・自治体の責任者が地域リーダーとして参加する。アライアンスは、KS3が小学校とGCSEの「橋渡し」として扱われ、独自の目的を持つ段階として捉えられてこなかったと指摘し、「エンゲージメントと帰属」「基礎的なリテラシー・ニューメラシー」「評価とデータの一貫性」「成人期への進路」の4分野を重点とする。事例募集は11月9日まで。
出典:Schools Week「KS3 alliance seeks evidence on transition to secondary school」(2026年9月16日)
筆者コメント
成功事例だけでなく、うまくいかなかった事例をあえて集めているところが興味深い。実践の共有というと、どうしても好事例の紹介に偏りがちであるが、何が機能しなかったのかという情報こそ、現場が同じ失敗を繰り返さないために必要なものである。
本記事の要約は各出典記事の内容にもとづき、筆者が要点を整理したものです。


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