マイクロティーチングの設計と指導案|はじめての模擬授業(教員養成講座|入門編)

教員養成講座 入門編。はじめての模擬授業は指導案づくりから。 教員養成講座

この回で使ったスライドの公開版(18枚)と、学生に渡している計画案の様式(マット運動・ネット型・ゴール型)を、記事の後半に置いています。どれもダウンロードできます。

はじめて人に教える、というのは、どこから始めればいいのでしょうか。

教員養成講座の二本目です。前回は、模擬授業の前に教材を理解するという、どちらかといえば応用的な演習を取り上げました。今回はもっと手前の段階で、これから初めて教える経験をする学生に向けた、小規模なマイクロティーチングの設計と、実際にやってみてどうだったかを書きます。別の授業なので、前回の続きではありません。

全員に、一度は教師役をやらせる

マイクロティーチングは、一つの授業をいくつかの場面に分けて、一人が一場面を担当する形で行います。担当するのは十分から十五分です。短く感じるかもしれませんが、初めて教える学生にとっては、これでも十分に長い時間です。

この設計で大事なのは、全員が必ず一度は教師役をやる、というところです。何人かの代表がやって残りが見る形にすると、見るほうの学びは薄くなります。体育館をいくつかの区画に分けて、複数の班が同時並行で進める形にすれば、全員に順番が回ります。教師役をやっていない週は、児童役として他の人の場面に入ります。教える側と教わる側を、週ごとに交代するわけです。

ビデオ係も各区画に一人決めておきます。あとで自分の姿を見るためです。これは本人が見るためのもので、こちらが評価に使うものではありません。

指導案は、空欄のある形で渡す

指導案を一から書かせることはしません。こちらでベースを作っておいて、学生は自分の担当する十五分のところだけを具体化します。種目はマット運動、ネット型、ゴール型の三つを用意しました。

全部を書かせないのには理由があります。はじめての学生に白紙を渡すと、単元の構成や時間配分といった、今回の学びとは別の難しさに時間を取られます。それも大事なことですが、この回で経験してほしいのは、目の前の十五分を具体的に思い描くことです。だから、枠はこちらが用意して、中身を埋めてもらう形にしました。

指導案は左右の二欄です。左に活動の流れ、右に指導上の留意点。左欄はベースがあるので軽く直す程度でよく、右欄は必ず自分で書く。これが課題の中心になります。

右欄に、何を書くのか

「指導上の留意点」と言われても、何を書けばいいのかは自明ではありません。そこで、四つの観点を示しました。

  • 学習のポイントをどう伝えるか 見本をどこで見せるか、どのタイミングで言うか、どこに注目させるか。
  • つまずきにどう手を打つか 予想される子どもの姿と、それに対する手立てを対にして書く。たとえば、パスがつながらないなら、キャッチして止めてよいことにする、ワンバウンドを認める、というように。
  • 場をどうつくるか マットの配置、教師が立つ位置、子どもの集合場所と待つ場所、動線。
  • 用具をどう扱うか 話を聞くときはボールを下に置く、順番に一人ずつ進む、といった約束ごと。

書き方としては、教師が何をするかという形で、具体的に書いてもらいます。マットの間隔は二メートル、一人ずつ進む、合図は手を上げる。このくらいまで書くと、当日に迷いません。

シナリオは、口語で書かせる

指導案の下に、実際に話す言葉をそのまま書く欄をつくりました。集合の挨拶から、導入、発問、見本を見せるときに注目させる言葉、最後の振り返りまで。書き言葉ではなく、口から出る言葉で書いてもらいます。

ここで一つだけ条件をつけました。技能のポイントは二つに絞ること。初めて教える人は、知っていることを全部言おうとします。言われた側は覚えていられません。二つに絞ると、どこでそれを言うかを考えざるを得なくなります。

安全は、冒頭で設計する

体育のマイクロティーチングでは、安全の設計が指導案の一部になります。これは本番の授業でも同じですが、学生のうちは、安全を「気をつけること」として頭の中に置いてしまいがちです。そうではなく、冒頭で何を言うか、用具をいつ配っていつ回収するか、どの向きに並ばせるか、という具体的な段取りとして書いてもらいます。

マットなら、見本は全員が見える位置に集めて、静かになってから説明する。マットは縦一列、間隔を取って、一人ずつ進む。教師は先頭に立つ。ボールを使う種目なら、練習からゲームに移るときに、どのタイミングでどう集めるかを決めておく。決めていないと、ボールは必ず散ります。

やってみると、右欄で筆が止まる

ここからは、実際にやってみてどうだったかです。

演習の時間に入って、はっきりしたことがあります。右欄の「指導上の留意点」のところで、手が止まる人が多くいました。左欄の活動は、ベースがあるので進みます。シナリオも、話す言葉なので何とか書けます。止まるのは、留意点です。

すぐに書き進められた人もいましたが、多くは手が止まっていました。ただ、止まっているあいだ、何も考えていないわけではありません。質問はよく出ましたし、むしろ考えすぎて書けない、という様子でした。

なぜ、そこで止まるのか

質問を受けていて気づいたのは、助言そのものは届いている、ということです。こちらが「ここで子どもはこうなりやすいから、こう手を打つ」と話すと、学生は納得します。ところが、それを自分の指導案の言葉に書き起こすところで、また止まる。聞いて分かることと、自分の文脈で書けることのあいだに、はっきりした段差があります。

考えてみると、留意点を書くというのは、まだ起きていないことを予想する作業です。子どもがどこでつまずくかを思い描けなければ、手立ては書けません。そして、初めて教える学生には、その「子どもの姿」の在庫がありません。自分が子どもだったときの記憶はありますが、それは自分の記憶であって、目の前の三十人の姿ではない。

つまり、書けないのは文章力の問題ではなく、想像の材料がないということです。そう考えると、課題の出し方として、いきなり留意点を書かせるのは順序が逆なのかもしれません。先に「この場面で、うまくいかない子はどんな姿を見せると思うか」だけを書き出させて、そのあとで手立てを考える。段を一つ挟むほうが、たぶん進みます。

もう一つ思ったのは、見本を見せていなかったということです。過去の指導案の留意点欄を、良い例として見せていませんでした。書き方が分からないのは当然かもしれません。ただし、見本を見せると、それを写して終わる学生も出ます。見せるなら、なぜその留意点が必要なのかという理由とセットでないと意味がない。来週、そこを試してみます。

当日のスライド

この回で使ったスライドの公開版です。本文で触れた「指導上の留意点」の書き方や記入例も、ここに含まれています。

使える形で置いておきます

この回で使っている当日のスライドと、学生に渡している計画案の様式を、ダウンロードできる形で置いておきます。計画案はいずれも空欄のある状態です。学習内容と活動の欄は書いてあり、「指導上の留意点」とシナリオの欄が空いています。ご自身の授業に合わせて書き換えてお使いください。

  • 当日のスライド(公開版) PDF/PowerPoint
  • 計画案 マット運動 PDF/Word
  • 計画案 ネット型(キャッチバレーボール) PDF/Word
  • 計画案 ゴール型(バスケットボール) PDF/Word

スライドは、授業の運営にあたる部分を外した公開版です。科目名と大学名、班分け、会場の配置図、日程、受講人数のページは外してあります。残してあるのは、マイクロティーチングの進め方、「指導上の留意点」の書き方(5つの観点と4つのルール、書き換えの例、記入例)、シナリオの書き方、そして課題のルーブリックです。18ページあります。

計画案は3種類あります。マット運動は側方倒立回転、ネット型はキャッチバレーボール、ゴール型はバスケットボールで、どれも15分の一場面を想定しています。活動の流れと図は入れてあるので、留意点の書き方を練習する教材としてそのまま使えると思います。

次にやってみること

  • 留意点を書く前に、「予想される子どもの姿」だけを先に書き出させる。
  • 過去の指導案の留意点を、理由の説明とセットで一例だけ見せる。
  • 質問に答えるとき、答えを言う前に「その場面で子どもが飽きたらどうしますか」と問い返してみる。

来週も同じ演習を続けます。締め切りが近づいたときに、どんな記述が出てくるのか。そこを見てから、またこの続きを書きます。

この記事は「教員養成講座」シリーズの一本です。シリーズの趣旨はこちらのページにまとめています。授業の資料は、学生の提出物に関わる部分を除いて、整理ができしだい置いていきます。

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